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Pixiv ⇒ ふたりの軌跡 02

大学生になった木吉と伊月の同棲話の2話目。
高校での紆余曲折がチラッと見え隠れしてきます。

※WJなどの部分も少し引用しております。そしてだいぶ弱い伊月さんになっていますので、注意してください。


   

+ + + + + + + + + +
 
 
日向を玄関先で見送った後、木吉はキッチンで洗い物を始める。
それを見つけ伊月は肩を竦める。

「俺がやるのに」
「洗い物はやるって言ったろ」
「じゃあ、お願いします」

伊月は木吉に声を掛けてリビングのテーブルを布巾で拭く。
久々の日向との時間はうれしさの中に懐かしさと少しの切なさが残る。高校時代の事は良い思い出として話すにはまだ少しの痛みが残る。木吉という人がいて落ち着いていられるのだと、改めて感じる。
拭き終わった布巾を持ってキッチンへ戻ると木吉が手を差し出してくる。

「ついでに洗っちゃうよ」
「ありがとう」

伊月はそのまま木吉に近づいて木吉の背中に額を押しつけた。
いつからか、木吉の体温は伊月にとっての精神安定剤のような役割を担っている。触れているとすごく安心できる。

「どうした?」
「うん。なんかこうしたくなった」

木吉は特に嫌がる素振りをすることはなく、伊月のさせたいままでいる。
けれど、洗い物が終わると伊月の手を引きリビングに戻る。
そしてソファに腰を下ろすと、その間に座るように手招きする。伊月は一瞬躊躇うが木吉に誘われるがまま座ると、木吉が後ろから抱きついてくる。
木吉は伊月を後ろから抱きしめたまま日向元気そうだったなとつぶやく。

「うん。元気そうだった」

木吉の腕に顔を擦り寄せ伊月も同意する。

「日向は変わらないから安心する」
「そうだな。ああいう部分が主将だったんだろうな」

俺には無理だなやっぱりと、木吉は言う。
伊月は木吉の腕に手を添える。
日向は変わらない中学の頃からずっと、それは伊月にとって安心するものだった。
自分の弱さを虚勢という殻で包んで、日向の隣に居続けた。
チームの戦力として居られる間は良かったが、チームが強くなり対戦相手も強くなっていくと自分はチームの弱みとなってくると徐々に歪みを生んでいった。
けれども日向はどんな逆境においても伊月を信じていた。
伊月なら覆すはずだと、だから掛ける言葉も容赦がない。伊月がこんなことで、崩れるはずがないとずっと信じてくれている。
そしてそれに伊月は応え続ける。ギリギリの所にいた伊月に気付いたのは木吉だった。
弱い感情に押し潰され掛けていた伊月を救ったのは木吉だ。
日向から掛けられる期待に、身体的にも体力的にも精神的にも限界ギリギリで応える伊月に、それを理解した上で手を差し伸べた。以来、伊月は木吉に依存している。
過去の痛みが引かずにて伊月の中で苛んでいることを、木吉は知っている。だからこそ木吉は伊月をこれでもかと甘やかす。
そしてその手は今の伊月にはなくてはならないモノだった。この手を失ってしまったらと考えると伊月はたまらなく胸が痛くなる。
木吉の手に触れて存在を確かめる。

「大丈夫。ここにいる」
「……うん。ごめん」
「謝らなくていいから」

木吉の言葉に涙がにじむ。もう泣かないと決めていたのにこぼれ落ちる涙を止めることは出来なかった。
 
 
 
日向との再会で、伊月が過去のことで心を痛める可能性があることは予想できた。
けれど、立ち止まったままではいけないと、日向を呼ぼうと言ったのは伊月だった。
だからその痛みは伊月が自分で招いた結果だ。
なのに木吉に甘えている自分を許せないと思う伊月の心も木吉はわかっていた。
わかっているが、それを突き放してしまうことは木吉には出来なかった。
伊月が今もまだギリギリの所に立っているのは木吉が一番よく知っている。
そんな状態の伊月を1人になど出来なかった。
木吉がそばにいることで落ち着くことが出来るなら、いくらでも居ようと思えるくらい木吉にとても伊月俊という人物は大事だった。
一緒に暮らそうと提案したのは木吉だった。
二人の進学先が決まった頃、通学の関係上どうしても一人暮らしが必要だった木吉が伊月に持ちかけた。
大学が別になってしまい今後会える時間が減ってしまうと思ったのも一つの要因ではあった。その頃には落ち着いてはいたが、二人になればまだ木吉の温もりを求める伊月に少しばかり不安もあった。
案の定、一緒にいられるとわかり伊月は嬉しそうに笑っていた。
決まれば木吉の行動は早かった。友人や知人に友達とルームシェアするからと宣伝した。
伊月と木吉が一緒にいるのは当たり前という状況を作った。
それが良かったのか二人が付き合っていると知っているのは日向を含め数名しかいないが、伊月と一緒にいても誰もなにも言わない。当然の空間を作れれば、木吉のものだった。
伊月は初めは戸惑っていたが、木吉の意図に気付いたのか気付いていないのか、一緒にいることが当たり前になっている空気に安心していた。

「お風呂入れないと」
「お。もうそんな時間かぁ」

ひとしきり木吉の体温を感じて落ち着いたのか、伊月が時間に気付いた。木吉も言われて気がつく。見れば時計は21時を回っていた。

「んじゃ、一緒に入る?」
「ば、ばかっ」

木吉の言葉に顔を真っ赤にさせている伊月に木吉は笑みを浮かべる。

「冗談じゃないんだが……」

そう言いながら伊月にはそのままソファに座っててと言い、木吉は浴室に行きスイッチを入れた。
   
   
  
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自己紹介:
のんびりまったり、同人活動している人間です。

【黒子のバスケ】
友人のススメで原作を読みアニメを見てます。誠凛の伊月センパイ&秀徳1年コンビを気に入っております。

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