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Pixiv ⇒ ふたりの軌跡01

大学生になった木吉と伊月の同棲話。
よき理解者の日向から見た2人です。
高校での紆余曲折からここに落ち着いたという設定。
高校時代の話などは話を進めていきながら追々追っかけていきたいなぁと思ってます。

+ + + + + + + + + +
  
木吉鉄平の横に伊月俊がいるのが当たり前になったのはいつのことだったのか、わからないほど自然にそうなっていたように思えた。
なので大学が決まった頃に春から同居することになったと切り出されたとき、日向は別に疑問には思わなかった。
それくらいに、その頃には2人が一緒にいるのは普通だったから。
それぞれ、進学する大学は違ったが、お互いが通いやすい物件を選び家の場所をご丁寧に地図付きで教えて貰ったのはつい先日のことだった。
しかも日向だけではなく、親しかった友人のほとんどに教えたというから日向は驚いた。
元々木吉の天然はわかっていたが、意外と伊月も自分のこととなると鈍感で、その2人が足されるとこういう結果が出ることに日向は元チームメイトとして少し心配した。
そんな心配を余所に、2人の関係は変にオープンにしたのがよかったのか、2人の本当の事情を知っている者以外には単なるルームシェアだと認識されているから驚いた。
本当は事実上の同棲だと日向は1人ごちた。
まさか2人がそういった関係だとは知らされた全員露程も思ってはいないのだろう。
日向も今では2人の理解者だが、初めは2人の関係には少なからず驚愕した。
打ち明けられたのは偶然の出来事だったが、遅かれ早かれ日向には言うつもりだったと言われたときは驚いた。
こういった関係は普通、ひた隠しにするものだと日向は思っていた。だから、打ち明けようと思っていた人の1人に自分が入っていた事には少なからず嬉しかった。
そうやって2人に信頼されていたんだと、知ることが出来たのは素直に嬉しい。
日向は2人の事を考えながら1人、その2人の住む家に向かっていた。



教えられたマンションにたどり着き、設置されているインターホンを押す。今日の訪問は事前に知らせていたので扉はすぐに開いた。

「いらっしゃい、日向」

笑顔で出迎えてくれた伊月に日向は久しぶりと声を掛ける。

「木吉ー。日向来たよー」

嬉しそうに部屋の奥に声を掛ける伊月は日向を中へ案内しながら笑っている。

「大学はどうだ?」
「それが、なかなか難しくてさ。ついてくのがやっとだよ」

後ろから状況聞けば笑いながら伊月が答える。

「やっぱり高校までの勉強とは違うよな」
「そうだなぁ」

日向も正直、これまでの勉強とは違い戸惑いながら講義を受けている。同じような感想を抱いている伊月に嬉しくなりながらも今後のためにも早く慣れなければと思う。
伊月に通されてリビングに入ると木吉が長身を活かして電気を取り替えていた。

「おー。日向、久しぶり」

上からすまんと言いながら、取り替えている木吉の下に伊月が行き声を掛ける。

「出来た?」
「真下に来ると危ないぞっと。出来た出来た」
「良かった」

木吉がうまく取り替えることが出来たようで下に降りる。日向はまだ越してきてそんなに経っていないのにと疑問をぶつける。

「リビングの電気は付いたままなのを利用してたんだよ」

伊月が使える物は少しでも使わないとと言いながら、やっぱり真っ先に交換だったなと木吉に声を掛ける。

「まあ、仕方ないな」

じゃあ、片付けて手を洗ってくると、木吉がリビングを出ていく。

「あ。日向は座ってて、いま飲み物持ってくるよ」
「ああ。お構いなく」

日向は不思議なやりとりだと感じながら、リビングに置いてあるソファに腰を下ろす。
キッチンがリビングから見える作りになっている部屋は、どこか新婚の新居のような感じがする。

「コーヒーでいい?」
「おー」

返事をしながら部屋を見渡す。
必要最低限の物しか置いていないのは、2人の性格を考えれば当然かと思いながら2人が来るのを待つ。

「日向、悪かったな」
「いや別に気にしてねぇよ」

日向が来る前に終わらせるつもりだったんだがなと、木吉がリビングに戻り日向の正面に腰を下ろす。

「俺こそ邪魔して悪かったな」
「来いと言ったのは俺たちだぞ」

2人だけの世界に邪魔してしまった日向はそう声を掛けるが、目の前の天然は誘ったのは自分たちだと平然と言うから困った。

「俺たちが来てくれってメール出したのに、日向が気にすることはないよ」

コーヒーを出しながら伊月まで言い出すので、日向は心の中で大きくため息を付いた。
ここまで自分のことを信頼してくれるのはありがたい。
けれど、2人してこうも無防備というのはどうなのだろうと思うが、言ったところで気付いてはもらえないだろう。

「結構、広い部屋だな」
「まあ駅から少し遠いのもあるからだろうけど、思ったほど家賃は高くなくて助かってるんだ」

家からの仕送りもあるよだけど、2人ともアルバイトで生活費を捻出しているようだった。

「日向、ご飯食ってくだろ?」
「ん?」

伊月が嬉しそうに言うので日向は2人が構わないならと言えば2人して食べていけと言うので、お言葉に甘えることにした。基本的にキッチンに立つのは伊月のようで用意を始める。

「自炊、してるんだな」
「ああ。伊月が作れるからと作ってくれるからな」

リビングで木吉と日向で話を続ける。頬杖をつきながら日向は木吉を見る。
高校の頃も笑みの絶えない人間だったが、伊月と暮らすようになり益々顔が緩みっぱなしになっているように思える。
そんな木吉につられてなのかわからないが、伊月は更にやわらかくなったように思う。木吉には甘えることが出来るだろうことは、端から見ていてよくわかる。

「幸せか?」
「ああ」

笑顔全開で返ってきたから日向は少しイラっとして、木吉の足を蹴る。

「いてっ」

本当に幸せボケ男になっている木吉に日向は呆れる。
けれど、友人が隠すことなく幸せだと言ってくれる現実に正直に良かったと思える。
2人とも色々抱え込んでしまう部分が多かれ少なかれあったので、それをお互いで分けあえるような仲になってくれたのなら、日向も安心できる。

「まあ、良かったよ」
「日向には感謝してる」
「あ?」

木吉の言葉に日向は声を上げる。

「俺が気付けない部分まで気付いてもらったりさ」
「何言ってやがる、肝心な部分はお前はちゃんと気付いてたじゃねぇか」

知らなかったのは俺だったんだと、日向は口にする。
中学から付き合いのあった伊月の事は、他の部員よりもよく気付くことが多かった。
けれど、1つだけ気付けなかった。
それをこの目の前の男は高校1年の頃に気付いた。それだけでも十分だと日向には思える。

「まったく、伊月をあそこまでさせてんのは自分なんだともう少し自信持ちやがれ」
「……ああ」

伊月は日向の知る限り、自分の弱みを人に見せない。
冷静沈着でいて常に戦局を見極める、そしてチーム全体の士気を上げさせる。その為に自分自身の不安など微塵も出さない。
それは試合中だけではない。
常にチーム全体を見つめている。それは日向やリコにしてみたら頼りにしてしまう部分だ。
だからこそ、どうにも出来なくなった時以外、伊月が日向やリコに相談を持ち出すことはない。基本、1人でどうにかしてしまうのが伊月俊だった。
そこに手を差し伸べたのが木吉だった。
木吉には伊月は弱みを見せ頼る。

「そうなってくれたのは、ここ1、2年の話だ」
「それでも、そうさせたのはお前だ」

それなりに木吉も苦労したんだろうが、伊月の頑なさはちょっとやそっとで柔らかくなるものではなないのは日向も知っている。

「まあ、それくらい苦労しないとな」

日向は木吉を見て笑う。

「なに2人で話してるんだよ。俺だけ蚊帳の外?」

伊月が手に皿を持ってやってくる。一気にリビングに良い香りが広がる。
皿の上にはパスタが盛られていた。

「あんま、こったもの出来なくて悪いけど」
「いや、十分だろ」

伊月は謙遜するが、料理など一切しない日向にしてみれば十分な料理だ。

「そう?」

高校時代、そこそこ出来ると言っていた伊月の言葉に偽りはなかったんだと日向は感嘆した。

  
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自己紹介:
のんびりまったり、同人活動している人間です。

【黒子のバスケ】
友人のススメで原作を読みアニメを見てます。誠凛の伊月センパイ&秀徳1年コンビを気に入っております。

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