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pixiv ⇒ ふたりの軌跡 04

大学生になった木吉と伊月の同棲話の4話目。
今回から過去編・高校での紆余曲折のお話になります。
※色々捏造している部分がありますので、気を付けてください。

01 / 02 / 03      




+ + + + + + + + + +
   
  
きっかけは何だっただろうか
ほんの小さなモノだった気がする

鷲の目を酷使し過ぎると、頭痛が起こる。
それは、木吉が一年の時にわかったことだった。



練習試合終了後、蹲ってしまった伊月を見て、その場に居た全員が試合に勝てた事を素直に喜ぶことが出来なかった。

「伊月ッ!」
「……だ、大丈夫。すぐ治まるから」

そう言いながらも、顔色は最悪で血の気が引いた手で頭を抑えている姿はとても大丈夫と言える状態ではない。

「無理すんな」
「平気だからッ」

日向の言葉に伊月は強く言い、数度の深呼吸を繰り返した後、立ち上がった。

「大袈裟だよ」
「お前なぁ……」
「ホントに大丈夫だから」

力ない笑みを浮かべてベンチに戻る姿はあまりに頼りない。

「伊月君?」
「カントクも、心配しないで」
「そんなこと言っても、病院とか……」
「平気平気」

リコの言葉にも伊月は頑なに〝平気〟〝大丈夫〟と言い通していた。そして数時間後には本当に顔色も良くなっていた。
けれど、木吉は一人引っ掛かりを感じていた。

それ以降、試合後に頭を押さえている姿が何度か見られるようになった。
軽度の時から重度の時まであるようだが、試合が縺れれば縺れるほど、伊月の顔色は悪くなっているように思えた。


そして思い至った結論。

「なあ、伊月」
「なに?」

練習の休憩中に木吉は伊月の横に陣取り声を掛ける。頭上から聞こえてきた声に伊月は顔を上げて首を傾げる。

「……頭痛って、目を使った時に起こったりするのか?」
「……ッ」

伊月の目が見開き、木吉を見つめる。そして目を逸らし、体育館を見つめる。

「どうして?」

わかったんだという言葉はなかったが、木吉は思ったままに伊月に言う。

「こうした練習中に起こることはまずない。決まって頭を抑えるのは試合中か試合終了後のどちらかだ。練習中との違いと言えば、目を使うか使わないかの違いしか思いつかなかった」
「なるほど」

バレないようにしてんただけど、やっぱりバレちゃうなと、伊月は苦笑する。

「最近はだいぶね、掴めてきたんだけど」

集中し過ぎるとまだ駄目だなと、伊月は何でもないように続ける。
木吉はその姿に眉を顰める。

「それを日向は知ってるのか?」
「……どうかな。言ったことはないから知らないかもしれないし、気付いているのかもしれない」

怖くて確かめたことないからと、伊月はリコと打ち合わせをしている日向に視線を向ける。

「でも、どうして日向?」
「……いや、中学のころからの付き合いなら、知ってるのかと思って」
「中学の頃はまだ自分自身も発展途上だったのもあったし、この目が活かせるとは思ってもなかったから使ってはいたけど頭痛がするほど集中しては使ってなかったな。それに、初戦で負けてたから試合数も少なかったしなと」

伊月はそう言って手に持っていたスポーツドリンクを飲む。
木吉はそれを見ながら日向の方も見る。
伊月のこの状態を日向が知らない訳がないとは思うが、知っていたなら止めてるだろうことも予想できる。
そこまで考えると日向は知らないのかと結論付けられるが、伊月の言うように確かめようとは思わなかった。

「言うのか、日向に」
「言わないよ」
「じゃあ、止める?」
「難しいな。伊月の目はチームにとって攻撃の要だ、止めろと言ったところで伊月も止めないだろう?」
「まあ、使うだろうな」

PGとして攻撃の起点にもなる伊月の目はチームにとっても強みだ。
それを止めてしまって、チームにどれ程の影響があるのかわからない。木吉は心配だが伊月が大丈夫だと言う以上、無理には止められない。

「今はだいぶうまく出来るようになってきたんだ、大丈夫だよ」
「本当なのか?」
「ああ。気付かれてなかったみたいだから言うけど、今の練習中も使ってる」
「えっ」

気付かれてなかったのなら良かったと笑う伊月に木吉は驚く。

「感覚さえ覚えて使えば、減るってわかったからな」

伊月はだから大丈夫だと木吉に言うが、木吉の心配はすべて取り除かれるわけではない。

「けどな、伊月……」
「木吉、俺にはこれしかない、これしか、ないんだ」

まっすぐ見つめられて言われた言葉に木吉は何も言う事は出来なかった。
それほどに伊月の目が真剣だったからだ。

「皆を活かすためのゲームメイク。それをする為にこの目は俺にとって必要不可欠だ」

誰にも止めさせないと、伊月は言い残し練習へと戻っていった。木吉はそれを見つめながら奥歯を噛み締める。
チームの為に目を使う度に体に負担が掛かるのならば止めさせなければならない。
それを止めさせるほど、説得できるものを持たない木吉は何も言うことは出来ない。ただ1人、伊月の体を心配する事しかできない。
新設校である誠凛バスケ部は、現在の部員は6人。その内、PGが出来るのは伊月ただ1人だ。代わりになれるものが居ないのも事実。
木吉もPGになれる資質はあるが、PGである伊月が居て、木吉がセンターにいてこそ活かされる部分もある。

「誰にでも出来ることじゃないだけに、難しいな」

木吉は1人呟いて練習に戻った。


 * * *


2年になり、木吉がバスケ部に復帰する頃には伊月は問題なく目を使うことが出来ているようだった。
入ってきた新入部員にも恵まれたのもあるだろうが、聞けば頭を押さえることも無くなっているようで木吉はそれがわかると安堵した。
けれど夏に行われた海の合宿でその安堵は再び不安へと駆られる。


日中の激しい練習を終え、大浴場で汗を流し各々部屋で休んだり走りに行ったりした自由時間だ。そんな中、木吉は渇いた喉を潤すため飲み物を買おうと自動販売機を探して廊下を歩いていた。自動販売機が見え近づこうとすると、話声が聞こえて足を止めた。
木吉の視線の先にいたのは伊月と秀徳の1年高尾和成だった。
自動販売機で飲み物を買いながら何か話をしていた。

「頭痛、するんじゃないっすか?」
「ということは、高尾もか?」
「まあ、しないって言ったら嘘になっちゃうんですけど。耐えられない痛みじゃないし、それでも最近ではほとんどなくなったんで」

大丈夫ですよと、高尾は言いながら清涼飲料水のキャップを外す。
その横で伊月は缶コーヒーを口に含む。

「そのこと、部の誰か知ってたりするのか?」
「ちゃんと話した事はないっすね。ここ1年くらいぶっ倒れることもないんで……あ、でも真ちゃんは気付いたか……」

ああ見えて、試合中の人の不調を見る目はあるんすよと、高尾は苦笑する。
伊月は良いことじゃないかと高尾の言葉に笑う。

「そういう伊月さんにも居るんしょ?」
「ん、まあ、そうだなぁ。目を使うことで頭痛が起こるって知ってる人はいる」

隠してもしょうがないので伊月は正直に言う。

「主将っすか?」
「いや、別の人」
「それって話したんですか?」
「いや、気付かれた。1年の頃は全然感覚が掴めなくてよく頭抱えてたから」

他の人によく気付かれなかったっすねと、高尾が明るく言う。

「まあ、気付いていて言わないのかもしれないし、この目と連動してるとは思ってないのかも」
「それもそうっすね」

目で見たモノを頭の中で視点を瞬時に変えられ俯瞰でコート全体が見れる空間認識能力を持つ高尾と伊月は試合中に行いゲームメイクをしなければならない。それには相当な集中力を要し、必要以上に集中しすぎると頭痛が引き起こされる。
この感覚は同じ能力を持っているもの同士でしかわからないものだ。一度こうして話をしてみたかったとお互いが思っていたようだった。

「さてと、そろそろ部屋に戻りまーす」
「ああ。引き止めて悪かったな」
「いえいえ。俺も話してみたかったし、また何かあれば話しましょう」

高尾は携帯を出して振る。木吉がこの場に来る前に連絡先の交換でもしていたようだった。高尾はそのまま木吉のいる方へ歩いてきて驚くこともなく肩を竦める。

「木吉さんだっけ? アンタっしょ、知ってる人って」

確信めいて言う高尾に木吉は無言のまま頷く。

「居ることに気付いたけど、そのまま気にしないで伊月さんが話してたからもしかしてって思ったんだけど、案の定か」
「気付いたのか」
「背後に来たって俺たちじゃ気付きますって」
「あ……」

高尾は笑って言った後、木吉に向かって真顔になった。

「知ってるなら、ちゃんと見ておいた方がいい。あの人は強いけど弱い」
「え……」

それまでの高尾のトーンではなく小声で木吉に聞こえるか聞こえないかくらいで告げた。
木吉は言われた言葉に驚き高尾を見るが、高尾はすでにいつもの飄々とした表情になっていた。

「それじゃ、失礼しまっす」

またいつものトーンに戻り高尾は歩きだした。木吉はその背を見つめた後、自動販売機の前でコーヒーを飲んでいる伊月を見る。

「立ち聞きなんて、趣味悪いぞ」
「気付いてたのなら、言えば良かったじゃないか」
「別に木吉に聞かれてまずい内容じゃなかったからさ」

伊月は黙って立ち聞きしていたことを非難するが、知っていて話を進めていたと言ってくるからそこまで責めているわけではないようだった。

「一度、話してみたかった。同じような目を持っているなら同じ痛みを抱えているのかなって」

技量はやっぱり向こうの方が上みたいだけどと、伊月は続ける。

「あの秀徳で、一年でレギュラーになるんだから当然か」

負けてられないよなと、笑顔で言う伊月に木吉は相槌をかえす。
けれど頭の中は高尾に言われた言葉が響いていた。
伊月には聞こえないように木吉にだけに向けられた言葉。高尾はあの短い時間、伊月と話していて何に気付いたというのだろうか。
木吉は高尾の忠告通り伊月を見ていようと心に決めた。
  
  
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自己紹介:
のんびりまったり、同人活動している人間です。

【黒子のバスケ】
友人のススメで原作を読みアニメを見てます。誠凛の伊月センパイ&秀徳1年コンビを気に入っております。

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