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緑間は医師となり大学病院に勤務していた。
研修医を終え、駆け出しの医師として毎日忙しく過ごしていた。
先輩医師と患者を受け持つようになり、徐々に一人で色々やらせてもらえるようになってきた矢先の出来事だった。
「ここが、勤務していた病院?」
「ああ」
天使と共に訪れたのは直前まで働いていた病院だ。
同僚たちは突然の緑間の訃報に驚いているようだった。通夜と告別式の日時を確認している。けれども、命を扱う職場では必ずしも行けるわけではなく、行けないとわかっている者たちは行ける者に香典袋を預けていた。
緑間はそれを呆然と見つめていた。霊体なので人に見えるわけではなく、その場に居るのに気付いてもらえないという非常に複雑な気分だった。
「やっぱり見えないんだな」
「そりゃあ、ね」
この複雑な気持ちをこの天使も知っているのだろう、特に茶化すこともなく苦い表情を浮かべていた。しばらく見つめたままだった緑間に天使は声を掛けてきた。
「どうだ? なんか思い当たる事あった?」
「いや、患者は気になるが俺がいなくても変わりはいるのだよ。まだ半人前もいいところだからな」
「そっかぁ……」
緑間の言葉に天使は少し考え込む、あと気になりそうな場所とかありそうか? と、聞いてくるが現在の緑間の生活の大半がこの病院だった。それ以外であるのとするとなにになるのだろうかと、緑間も考える。
「……あんま、気分良くないけど自分の通夜とか告別式を見る?」
「自分の……?」
「そう。過去の友人知人が来てくれるから、何かわかるかも」
確かにこういった機会には、人が集まる。
そう考えて緑間は何か引っかかるものを感じた。前にも誰かの通夜、告別式に参列したようなと、考える。けれど、これまで親戚の通夜、告別式に参列したことは何回もあったと考えなおした。
それが今回、自分の通夜、告別式になる……それは確かに複雑だ。
「どうする?」
「……行くのだよ」
天使はわかったと頷いて、宙へと浮いた。
緑間もそれに続き宙へと浮き、目的地へと向かうことにした。
空を飛ぶという感覚は不思議だと緑間は思う。
「浮かぶことにも慣れた?」
「そうだな」
天使が振り返って緑間に問いかける。
あの世とこの世の狭間からこの世へと来た際に、宙に浮いていることに驚いていた緑間は、浮いて移動するのに慣れるのに時間がかかった。
人間が空に浮くというのに、抵抗がある人間には特に多いんだけどねと、天使は特に面白がるようなことはなかった。面倒な顔をすることなく、緑間が慣れるように手を貸していた。
「慣れれば楽だな」
「まぁ、そうね」
地上を移動しないというのは、楽だと思うのと同時に地上を上から俯瞰で見れるというのは新鮮だった。
緑間の通夜は緑間の実家から少し離れた葬祭場で行われることになっているようで、その近くに行くとそこへ向かうらしい、緑間の知人が歩いているのが見えた。
「知り合い?」
天使が止まった緑間に気付いて声を掛ける。
「ああ。中学の時のチームメイトだ」
中学時代共に汗水垂らしてチームメイトとして一緒に過ごし、高校では敵となった。高校では互いを認めつつも対戦校として三年間、試合をしたり見に行ったりとしていた。
中学から付き合いのある黒子と黄瀬が歩いていた。
「突然スね」
「そうですね、ビックリしました」
緑間の突然の訃報に驚いてここに来たという感じだった。
「火神っちは?」
「はい。こちらに向かってます。明日の告別式には間に合うと連絡がありました」
「青峰っちもっス」
同級生が突然、この世からいなくなってしまうという現実は、言葉に言い表すことのできない悲しみがあると、黄瀬が真情を吐露する。
「あの日以来、もっと先の未来までこういうのはないっと思ってたんスけど、現実って残酷っスよね」
「……そうですね。よりによって、それが緑間君だなんて」
斎場に向かう二人の足取りは重たい。
その姿を緑間は見つめていた。
二人の会話に何か引っかかるものを感じながら、緑間の斎場へと向かった。
集まってくる顔ぶれに緑間は複雑な心を、隠しきれずに無言で見つめていた。天使は何も言わず少し後ろに下がって待っていてくれた。
黒子と黄瀬を見て感じた違和感を、緑間は考えていた。高校の頃を思い出そうとすると、はっきりと思い出せなかった。
黒子と何度か対戦し、自分の中で色々変化があったはずなのに、それがなんだったのか試合の展開を思い出すと霞がかった。
次の日の告別式には火神や青峰も参列していた。
「間に合って良かったっス」
「まあ、な」
青峰は歯切れ悪い返事をして黄瀬の横に立っている。
「テツと火神は?」
「もう来ると思うんスけど」
あたりを見渡していると遠くから歩いてくる人影を見つける。
「来たっスよ」
「お久しぶりです。青峰君」
「ああ」
「お久しぶりっス、火神っち」
「おー」
黄瀬の挨拶に火神は複雑な顔をする。
久々の再会が友人の告別式というのは、後味が悪い。
「出来れば、こういうのでは会いたくなかったですけど」
「ああ、まったくだ」
青峰は黒子の言葉に同意する。
「あれから、十年……いやもっと経ってるか」
「そうっスね」
向こうで会ってるといいんスけどと、黄瀬が目を伏せて言う。非現実的な言葉だが誰も何も言わない。
「会えるなら会えた方がいいです。きっと緑間君は望んでいたんじゃないかと思います」
「だな」
過去の痛みを引きずった表情の四人は告別式の斎場へと向かって行った。
緑間はその姿を見つめる。
四人の会話には、過去の断片が見え隠れしていた。
誰かが以前にも亡くなっていて、少なからず自分はその人物と関わっていた。
けれど、緑間はその誰かがわからずにいた。
自分はその誰かを忘れてしまったのか、あの四人の会話では緑間にとって重要な人物のように話していた。
――かおッ……! なんでッ……
ふと、頭に過る記憶の断片に緑間は頭を押さえる。
自分は何か重要な事を忘れているんではないかと緑間は思う。
「……天使」
緑間は振り返ることなく、背後にいる天使に声を掛ける。
「なに?」
「何か重要なことを忘れている気がするのだよ」
「……重要な事?」
緑間は天使の問いには答えず、告別式が行われている斎場へと飛んで行った。
「あっ……」
残された天使は飛び去っていく緑間の背中を見つめる。
「……思い出さないんじゃ、なかったのかよッ。今吉さんッ」
唇を噛み締め天使、和成は空に呟いた。
...to be
研修医を終え、駆け出しの医師として毎日忙しく過ごしていた。
先輩医師と患者を受け持つようになり、徐々に一人で色々やらせてもらえるようになってきた矢先の出来事だった。
「ここが、勤務していた病院?」
「ああ」
天使と共に訪れたのは直前まで働いていた病院だ。
同僚たちは突然の緑間の訃報に驚いているようだった。通夜と告別式の日時を確認している。けれども、命を扱う職場では必ずしも行けるわけではなく、行けないとわかっている者たちは行ける者に香典袋を預けていた。
緑間はそれを呆然と見つめていた。霊体なので人に見えるわけではなく、その場に居るのに気付いてもらえないという非常に複雑な気分だった。
「やっぱり見えないんだな」
「そりゃあ、ね」
この複雑な気持ちをこの天使も知っているのだろう、特に茶化すこともなく苦い表情を浮かべていた。しばらく見つめたままだった緑間に天使は声を掛けてきた。
「どうだ? なんか思い当たる事あった?」
「いや、患者は気になるが俺がいなくても変わりはいるのだよ。まだ半人前もいいところだからな」
「そっかぁ……」
緑間の言葉に天使は少し考え込む、あと気になりそうな場所とかありそうか? と、聞いてくるが現在の緑間の生活の大半がこの病院だった。それ以外であるのとするとなにになるのだろうかと、緑間も考える。
「……あんま、気分良くないけど自分の通夜とか告別式を見る?」
「自分の……?」
「そう。過去の友人知人が来てくれるから、何かわかるかも」
確かにこういった機会には、人が集まる。
そう考えて緑間は何か引っかかるものを感じた。前にも誰かの通夜、告別式に参列したようなと、考える。けれど、これまで親戚の通夜、告別式に参列したことは何回もあったと考えなおした。
それが今回、自分の通夜、告別式になる……それは確かに複雑だ。
「どうする?」
「……行くのだよ」
天使はわかったと頷いて、宙へと浮いた。
緑間もそれに続き宙へと浮き、目的地へと向かうことにした。
空を飛ぶという感覚は不思議だと緑間は思う。
「浮かぶことにも慣れた?」
「そうだな」
天使が振り返って緑間に問いかける。
あの世とこの世の狭間からこの世へと来た際に、宙に浮いていることに驚いていた緑間は、浮いて移動するのに慣れるのに時間がかかった。
人間が空に浮くというのに、抵抗がある人間には特に多いんだけどねと、天使は特に面白がるようなことはなかった。面倒な顔をすることなく、緑間が慣れるように手を貸していた。
「慣れれば楽だな」
「まぁ、そうね」
地上を移動しないというのは、楽だと思うのと同時に地上を上から俯瞰で見れるというのは新鮮だった。
緑間の通夜は緑間の実家から少し離れた葬祭場で行われることになっているようで、その近くに行くとそこへ向かうらしい、緑間の知人が歩いているのが見えた。
「知り合い?」
天使が止まった緑間に気付いて声を掛ける。
「ああ。中学の時のチームメイトだ」
中学時代共に汗水垂らしてチームメイトとして一緒に過ごし、高校では敵となった。高校では互いを認めつつも対戦校として三年間、試合をしたり見に行ったりとしていた。
中学から付き合いのある黒子と黄瀬が歩いていた。
「突然スね」
「そうですね、ビックリしました」
緑間の突然の訃報に驚いてここに来たという感じだった。
「火神っちは?」
「はい。こちらに向かってます。明日の告別式には間に合うと連絡がありました」
「青峰っちもっス」
同級生が突然、この世からいなくなってしまうという現実は、言葉に言い表すことのできない悲しみがあると、黄瀬が真情を吐露する。
「あの日以来、もっと先の未来までこういうのはないっと思ってたんスけど、現実って残酷っスよね」
「……そうですね。よりによって、それが緑間君だなんて」
斎場に向かう二人の足取りは重たい。
その姿を緑間は見つめていた。
二人の会話に何か引っかかるものを感じながら、緑間の斎場へと向かった。
集まってくる顔ぶれに緑間は複雑な心を、隠しきれずに無言で見つめていた。天使は何も言わず少し後ろに下がって待っていてくれた。
黒子と黄瀬を見て感じた違和感を、緑間は考えていた。高校の頃を思い出そうとすると、はっきりと思い出せなかった。
黒子と何度か対戦し、自分の中で色々変化があったはずなのに、それがなんだったのか試合の展開を思い出すと霞がかった。
次の日の告別式には火神や青峰も参列していた。
「間に合って良かったっス」
「まあ、な」
青峰は歯切れ悪い返事をして黄瀬の横に立っている。
「テツと火神は?」
「もう来ると思うんスけど」
あたりを見渡していると遠くから歩いてくる人影を見つける。
「来たっスよ」
「お久しぶりです。青峰君」
「ああ」
「お久しぶりっス、火神っち」
「おー」
黄瀬の挨拶に火神は複雑な顔をする。
久々の再会が友人の告別式というのは、後味が悪い。
「出来れば、こういうのでは会いたくなかったですけど」
「ああ、まったくだ」
青峰は黒子の言葉に同意する。
「あれから、十年……いやもっと経ってるか」
「そうっスね」
向こうで会ってるといいんスけどと、黄瀬が目を伏せて言う。非現実的な言葉だが誰も何も言わない。
「会えるなら会えた方がいいです。きっと緑間君は望んでいたんじゃないかと思います」
「だな」
過去の痛みを引きずった表情の四人は告別式の斎場へと向かって行った。
緑間はその姿を見つめる。
四人の会話には、過去の断片が見え隠れしていた。
誰かが以前にも亡くなっていて、少なからず自分はその人物と関わっていた。
けれど、緑間はその誰かがわからずにいた。
自分はその誰かを忘れてしまったのか、あの四人の会話では緑間にとって重要な人物のように話していた。
――かおッ……! なんでッ……
ふと、頭に過る記憶の断片に緑間は頭を押さえる。
自分は何か重要な事を忘れているんではないかと緑間は思う。
「……天使」
緑間は振り返ることなく、背後にいる天使に声を掛ける。
「なに?」
「何か重要なことを忘れている気がするのだよ」
「……重要な事?」
緑間は天使の問いには答えず、告別式が行われている斎場へと飛んで行った。
「あっ……」
残された天使は飛び去っていく緑間の背中を見つめる。
「……思い出さないんじゃ、なかったのかよッ。今吉さんッ」
唇を噛み締め天使、和成は空に呟いた。
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