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pixiv ⇒ 素直になれない君へ

森月webアンソロ企画「HIGH 5!」にて掲載されていた作品です。
公開終了に伴いpixivに公開させて頂きました。 


森月Webアンソロ用お題メーカーから出てきた「晴れた公園にて」「見ないでお願い」「きらいだったよ」の中から、「晴れた公園にて」「見ないでお願い」をセレクトして出来た話です。
はじめは3つ使って別の話を考えていたのですが、うまいことまとまってくれず、こちらの方にしました。
大好きな人だからこそ、思い切り甘えることの出来ない伊月さん。
素直に甘えてくれて構わないといつでも両手を広げて待っている森山さん。
そんな、2人の恋物語の妄想はなかなか止まらないです。






+ + + + + + + + + +

   
伊月が風邪をひいたとメールで知らされた森山は公園のベンチに腰かけて晴れた空を見上げていた。
本来ならばその横に伊月が居るはずだったのだが、昨日の夜の段階で電話越しに聞こえる声が鼻声だったから、今日はきっと熱を出すことになるんだろうなと予想していたが、案の定今朝になって伊月からごめんなさいという電話があった。
明らかに覇気のない声に森山は気にしないでと声を掛けた。
本来ならば出かける必要はなくなったのだが、外へ1人出掛けることにした。
冬の空は澄んでいて綺麗だった。吐く息は白くまだまだ春まで遠いなと思いながら昨日と今朝の伊月との電話を思い出す。

「伊月、なんか鼻声? 風邪でも引いた?」
「・・・・・・そんなこと、ないですよ。元気ですよ」

と言いながらも、ズズッという鼻をすする音が聞こえているので、大丈夫なことはないのだろうと察せられた。

「ならいいけど、温かかくして早く休むんだよ」
「森山さんこそ大学に受かったからって、油断して風邪ひいちゃダメですよ」

笑いながら言う声に森山は少し安堵しながらも長電話は良くないなと思った。

「それじゃあ、また明日」
「はい。おやすみなさい、森山さん」
「おやすみ」

そして電話が切れる直前、電話の向こうで伊月が咳をしているのが聞こえて森山は眉を寄せた。

――これは、明日は無理かな

少し残念な気もするが、伊月に無理はして欲しくない。
森山は大きく息を吐いて空を見た。
翌日の朝、やはりというべきか森山の携帯が鳴った。森山はディスプレイに出た名前に少し残念に思いながらも明るく電話に出た。

「もしもし、伊月? どうした?」
「おはようございます・・・・・・けほ、けほっ、ごめんなさい」
「悪化しちゃったか」
「ごめんなさい」

少し掠れた声で『ごめんなさい』を繰り返す伊月に森山は謝らない謝らないと言うが、伊月が気にしないはずがない。

「今日の約束なんですけど・・・・・・」
「うん。いいよ、また今度会えばいいよ」
「・・・・・・はい」

すごく残念そうに頷いてくれるだけで、森山には十分だ。

「ほら、ちゃんと寝て早く治すんだよ」
「ホントにごめんなさい」
「ほら、気にしない。具合が悪くなるのは誰にでもあることなんだから。そんなに気にするならお見舞いに行っちゃうよ」
「や、いいですっ」

からかい半分で言った言葉だったけれど、そんなすぐに拒絶の言葉が出てきたことに少しショックだった。

「なんか、そんなすぐに断られると傷つくなぁ」
「そんなんじゃないですけど、伝染っちゃいますし」
「まあ、行っちゃったら。気使って逆に疲れさせちゃいそうだしね、大人しくしてるよ」
「そうしてください。・・・・・・けほ」

伊月の咳に森山はそろそろ電話を切ろうとした。

「ほらほら。伊月の方こそちゃんと大人しく寝てないと」
「・・・・・・はい。あ、あの・・・・・・」
「ん?」
「いえ、なんでもないです。今日はすいませんでした」
「わかったから。お大事にね」

電話を切りながら、森山は見えない伊月の容体を気にしながらも会えない寂しさに頭を掻いた。




そういえば、伊月は最後になにが言いたかったのだろうと森山はふと空を見上げながら考えた。
今日の事を謝るのならば、あんな改まって言う事もなかったんだろうけどと思うと、少し気にはなった。
あまり、普段から伊月が森山にお願いをすることは少ない。
それこそ、我儘なんて言われたこともない。
森山にしてみたら、すごく甘やかしたいと思っているのに伊月は甘えることをあまり良しとは思っていないようで、森山は少し物足りないと感じてしまっていた。
そういう部分があるからこそ、伊月に惹かれているというのもあるのだが、いつか無条件に甘えてくれればと思わずにはいられない。
見上げていた空に鳥が一羽飛んでいるのが目に入った。
何の鳥なのか種類はまったくわからないが、伊月を思い出してしまうのは恋のせなんだろうと思いながら俯瞰で見える感覚というのはどういうものなんだろうと考える。
考えているとポケットに入れていた携帯が震え森山は見上げていた顔を降ろして携帯を取り出す。
見れば伊月からの着信で森山は驚きながらも電話に出た。

「伊月? どうした? 大人しく寝てないと・・・・・・」
「・・・・・・やまさん」
「ん?」

か細い声で呼ばれ、森山は優しく先を促す。だいぶ熱が上がっているのか、朝以上に声に覇気はない。

「・・・・・・て、ください」

――来てください・・・・・・

そう聞こえた気がして森山は怪訝に思う。

「やっぱり、一人じゃ……無理でした・・・・・・」
「えっ、一人? ちょっと、伊月! 今から行くから大人しく寝てるんだよ」

森山は電話を早々に切ると走り出した。
てっきり、家族に看病されているものだと思っていた森山は少し焦りながら伊月の家に向かった。
森山がからかい半分で言った言葉に、反射的に来なくていいと言ってしまった手前、来てほしいとは言いづらくなってしまったのかと、森山は奥歯を噛み締めた。
だからあの時、言いかけて止めてしまったのだと。
けれど、悪化していく症状に耐えられなくなって森山に電話してきたことを考えると居た堪れなくて森山は歯痒さを抱えながら走り続けた。
病気で弱っている時ほど一人は心細い。そんな思いを伊月が抱えさせてしまったことに森山は自分自身が許せなかった。
辿り着いた伊月の家は静まり返っていた。
あの優しい家族のことだから、病人を一人置いて居なくなるとは考えにくい。
きっと伊月の風邪が悪化する前に留守になったのだろう。
森山は失礼を承知で伊月の家の扉を開けた。一度訪れた事のある伊月の部屋へと歩みを進める。
一度、扉をノックして中へと入る。
ベッドで横になっている伊月に近づいて、額に触れる。
明らかに高い体温に森山は眉を寄せる。

「んっ・・・・・・」
「伊月?」
「ぁ・・・・・・」
「いいよ、無理して話さなくていいから。一人でよく頑張ったね」

森山が口を開こうとした伊月を止めて頭を撫でて笑みを向ければ、伊月が甘えるように森山の手にすり寄った。

「家のもの勝手に使わしてもらっていい?」

頷いて肯定を示す伊月の額にキスを落として家のキッチンに向かい、まずはタオルを冷やした。救急箱から冷却シートを探し出して、冷蔵庫の中を確認して少し買い出しをしてきた方がいいと判断しながら伊月の部屋へと戻る。
少し汗のかいただろう額を濡れタオルで拭って冷却シートを貼る。ベッドに腰掛けて伊月の髪の毛に触れる。
少し苦しそうに呼吸してる伊月だが、森山が触れると安心するようで表情が和らぐ。
けれどずっとそうしているわけにもいかないので、森山は伊月に少し買い出しに行ってくると告げて外へと出た。
部屋を出る時に見た寂しそうな目だったが振り切って外へと出た。
風邪でも何か食べなければ薬が飲めないし、体力も落ちる。
けれど、勝手に見た冷蔵庫にはあまりそういった食材はなかったし、あまり勝手に使いたくはないというのが正直なところだ。
近くのスーパーに行き、レトルトのお粥にりんごなど、消化に良いものを選び会計を済ます。
時間にしたら二十分くらいだっただろうか、再び伊月の家に戻った森山は驚愕した。
ふらふらの伊月が玄関先まで来ていて思わず買ってきたものを落として駆け寄った。

「なに? どうしたの?」
「森山さん」

抱き締めてわかる熱の高さに驚きながらも伊月が森山に抱き着くので、優しく抱きしめ返してあげれば安心したように瞳を閉じるから森山は怒るに怒れない。

「大丈夫、ちゃんと居るから」

一人になって不安が襲ってきたのかと思いながら、熱でタガが外れた伊月は思い切り森山に甘える。
深層心理はそうだったのかと少し嬉しくなるが、タガが外れる程に酷い熱なんだと思えば早く横にさせないといけない。

「ごめんね」

伊月を少し離してから、横抱きにする。
普段ならば絶対嫌がるだろうにされるがまま、ぐったりと森山の腕の中にいるから歩くのも辛いだろうに森山を探していた心を思えば伊月が愛しい。
再びベッドへと横にする。これは一度眠らせないと行動が出来ないなと思いながら伊月を安心させるように頭を撫でる。
やはり具合が悪いのだろう、数分と経たずに伊月から寝息が聞こえてきた。
森山はそれを見届けて、キッチンへと向かった。




「可愛かったなぁ。〝森山さん、寂しい〟ってくっついて・・・・・・」
「そ、そんなことっ、言って、ない・・・・・・です?」

勢いよく否定しようと口を開く伊月は昨日と比べて顔色もよく熱も微熱まで落ち着いた。
今はお粥を食べながら昨日のことを話す森山の言葉に伊月は熱ではなく赤面の連続だった。
両親と妹は金曜から旅行へと出掛けていて、姉は大学のサークルで合宿だと家を空けていた。
心置きなく森山と出掛けられると浮き足立っていたのがいけなかったのか、風邪をこじらせてしまった。
どうにか一人で治せるだろうと思っていたが、土曜の朝、森山へと外出の断りの電話をしているあたりから少し耐えられそうになかった。
だから、森山に来てほしいと素直に言えなかった。けれど、昼を過ぎたあたりから悪寒が走り一人で動き回るのも限界が来て、再び森山に電話を掛けた。
皆まで言わずとも森山は察してくれてこうして伊月の看病をしてくれている。
来てくれた後のことの記憶は熱もあったせいか曖昧で、森山にいつも以上にべったり甘えたのはぼんやり記憶している。
けれど、どこか現実感が伴わないのは熱があったせいなんだろう。

「いいんだよ。普段から甘えてもらって」
「だ、ダメです」
「なんで?」

森山は伊月が普段使っている学習机の椅子に腰かけてまな板も使わずリンゴを切っている。
器用に剥けていくリンゴを見つめながら伊月は口を開く。

「甘えちゃったら、森山さんから離れられなくなっちゃう」
「・・・・・・」

思ったことが口から出ていた事に気付いたのは、森山の手元が止まっていたからだ。
不思議に思って、森山の顔を見ると驚きに目を見開いていた。

「え・・・・・・」
「伊月、今のもう一回言って」
「えっ・・・・・・ええっ!?」

そこではじめて自分が思ったことを口にしていた事に気付いた伊月はリンゴのように顔を赤く染めて横を向く。

「ちょっと、伊月」
「い、今はなし。なしです。忘れてください」
森山の顔がまともに見れず伊月は慌てて口を開くが、時は戻らないし、過去を変えることは出来ない。

「いや、今のは忘れられない」

可愛い伊月が見れたし、一生忘れられないなぁと口にする森山に伊月は手にしていたお粥の入っていた器を森山に突きだした。
森山はその勢いで器を受け取って、伊月を見れば掛け布団を頭から被ってしまっていた。

「え、なんで」
「見ないでください」

中から聞こえるくぐもった声に森山は苦笑するしかない。

「どうして、可愛かったよ」
「・・・・・・見ないで、リンゴに集中してください」
「わかった、わかったから出ておいで。リンゴ剥けたから」

病人に意地を張らせてはいけないと森山は声を掛ける。
先程の伊月の言葉で、十分だ。
ひょこと、少しだけ顔を出した伊月に笑みを向けて、皮の剥けたリンゴを差し出した。
むくりと体を起こして、伊月は森山からリンゴを受け取り、シャリと音を立てて食べる。
森山もそれを見届けてリンゴを食べる。

「そうだ。風邪が治ったらまた出掛けよう。昨日いた公園が気持ち良かったからさ」

森山の言葉に伊月が首を傾げる。

「散歩しててさ、たまたま立ち寄ったんだけど穏やかでさのんびりできるよ」
「行きたいです」

笑みを零して頷く伊月に森山も微笑む。

「それじゃあ、はやく元気になってもらわないと」

まだ、少し熱のある伊月の頬にキスをして、森山はベッドに腰掛け伊月の頬に触れる。
森山の手がリンゴを触っていたこともあり冷たかったのもあるのだろう、気持ちよさそうに目を閉じるから森山は笑みを深くする。

「ほら、まだ熱があるから横になって」

素直に横になる伊月の不安そうな瞳に森山はそのままベッドに腰掛けたまま伊月を見つめて口を開く。

「このまま傍にいるから」

そう言って頭を撫でれば安堵の息を吐く伊月に森山は、まだ調子が悪いんだと思わずにいられない。

「森山さん・・・・・・ありがとうございます」
「どういたしまして」

森山は頭を撫でながら、少しでも早く良くなるようにと願いながら、伊月の寝息が聞こえるまで傍にいた。
それは少しほろ苦いけど、穏やかな時間。


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自己紹介:
のんびりまったり、同人活動している人間です。

【黒子のバスケ】
友人のススメで原作を読みアニメを見てます。誠凛の伊月センパイ&秀徳1年コンビを気に入っております。

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