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pixiv ⇒ もしもの出会い

森月webアンソロ企画「HIGH 5!」にて掲載されていた作品です。
公開終了に伴いpixivに公開させて頂きました。 


タイトル通りの森月の〝もしもの出会い〟です。
高校生になる前の伊月が幼くなりすぎた感が否めませんが、これが精一杯。
私の力不足です。ここから、二人の関係が進んでいくという感じです。
妄想するだけは自由ですよね!





+ + + + + + + + + +


彼を見かけたのはホントに偶然だった。
森山由孝は高校二年になる前の春休み、高校から自宅までの通学路の間にある公園に隣接されているストリートバスケットのコートで、その少年は一人ドリブルシュートの練習を繰り返しやっていた。
少しあどけなさの残る少年は、自分よりも年下だろうか未発達な体つきで、近所に住んでいる中学生なのかなぁと森山は漠然と思った。
この時は特に気にも留めずに、森山は家路に着いた。
その日以降、部活の帰りに必ずと言っていいほどその少年がコートでバスケットをやっていた。
いつしか森山は立ち止まって、その光景を見るようになった。
必ず一人で、けれどひたむきな目でボールを追いかける姿は、とても好感が持てた。
決まって彼が居るのは、晴れた日。
春の暖かな日差しの中、黒い髪と汗がキラキラと光っていた。
よくよく見れば整った顔立ちの少年だなぁと、思いながら彼の動きを見つめていた。
気付いたことは彼はスコアラーではなく、スコアラーを活かすプレイスタイルなのかなということだった。
春休みも後半に差し掛かる頃、森山はいてもたっても居られず、森山はコートに近づいて中に入っていた。
ゴールから落ちてきたボールが森山の足元に転がってくる。
それを追いかけてきた少年と目があった。

「あっ」

森山はボールを拾い少年の手に軽く投げる。

「コート、使いますか?」

少年はボールを受け取りすぐに練習に戻るのかと思ったが森山が次にコートを使いたいのかと思ったのか、問いかけてきた。

「えっ」
「ずっといらっしゃったので、使いたいのかと思ったんですけど……」

違いました? と、首を傾げる少年は森山がずっとコートを見ていたことに気付いていたようだった。
けれど、森山の方を見たような素振りはまったくなかった。

「見えてたの?」
「あ……」

森山の問いに少年が何かに気付いたようで、口を閉ざす。そしてしばらく沈黙の後、口を開いた。

「……俯瞰で見えるんです。なので、視線を向けなくても人がいるのはわかるので」
「そうなんだ。……そういう人がいるっていうのは、聞いてたけど、ホントにいるんだね」
「あの……」

少年の言葉に森山は納得した。
空間認識能力の高い人間だとコート全体を俯瞰で見ることができ、それを活かしたプレイをする選手もいる。
彼がその一人らしい。

「ごめん、見てたのは君のすごいひたむきだったから、つい見ちゃったよ」
「そんな、そんなことないです」
「そうかなぁ」

謙遜する少年に森山はそんなことはないと言うが、少年は首を振り俯く。
なにがそんなに自信がないのかがわからないが、森山は良いと感じたのにと少し残念だった。

「ホントは、もうボールには触らないんじゃないかって思ってたんですけど……」
「バスケ、止めようと思ったの?」

ボールを手で撫でながら、呟かれた言葉はあまり信じられない言葉だった。

「中学で、試合に一度も勝てなくて……、はじめは練習が足らないんだって必死になって練習したんですけど、やっぱり勝てなくて」
「……」
「元々、人よりも何倍も練習しなきゃ上手くならないので、もっとやらなきゃいけなかったのかもしれないんですけど、チームに居たスコアラーをろくに活かせずに結局練習試合にすら勝てない有様で」

ボールを撫でていた手が止まり両手で掴んだままそのボールを見つめる。

「そのスコアラーはバスケを嫌いになって、バスケ部のない高校への進学を決めてしまって……」
「まさか、君も?」
「……はい」

俯いたまま少し後悔の滲んだ表情に森山は小さく息を吐いた。

「だけど、最近どうしてもボールに触りたくなって、だけどひゅ……友達には見られたくなくて、ここまで来てバスケやって……ホント未練たらたらで」
「やっぱり好き、なんだ?」
「そう、みたいです」

バスケない高校への進学を決めてしまった彼に今後バスケをやる機会がないというわけではない。
体育館には必ずバスケットゴールが設置されているのだし、部活ではなく休み時間や放課後にやろうと思えばいくらでもできる。
ただ、友人の事がネックになっているのか、バスケをやりたくても表立って出来ないのかと森山は思った。

「その友達も完全にバスケを嫌いにはなってないんじゃないか?」
「えっ」
「やりたいけど、やれなくて。もう、意地になってるんじゃないかなぁ」

森山はそう言って彼に向ってパスをくれと手を出す。少年は戸惑いながらも森山に向けてボールを投げる。
森山はそれを受け取り3Pラインまで下がる。
そして何度かボールを地面へとバウンドさせながら口を開く。

「誰でもあることだろうしね」
「誰でも?」
「そう。かくいう俺もそうだったし」

森山の言葉に少年は目を見開く。
その表情を見ながら森山はシュートを放つ。
放たれたボールは綺麗な軌道を描いてゴールに入る。

「わぁ……すごぃ」

素直な賞賛の声が少し気恥ずかしいが数回跳ねて転がったボールを拾う。

「このシュートが打てるようになるまでかな、それまでは打っても入らないし、ゴールに入るようなボールはブロックされてほとほと嫌になってさ」

そしてもう一度3Pラインに立ちシュートを打つ。
森山のシュートフォームは独特でボールに回転が掛からない無回転シュートだ。
マニュアル通りの打ち方ではどうしても入らず自分のやりやすさを優先して練習したけったのものだ。
今では、ブロックされにくい利点もあり、レギュラーとして起用してもらえる森山にとっての最大の武器だ。
これが打てるようになるまでは、本当にいつバスケを止めようかと考える程だったが、今ではその感情が嘘のように楽しくて仕方がない。

「負け続けるのは確かに面白くないし、楽しくはないけどバスケってそれだけじゃないだろう?」

ゴールに入ったボールを手に持ち、再び彼に投げる。

「嫌いだ、もう嫌だって思いながらも、こうして練習してるのはどうしてか考えてごらん」
「……」

森山からボールを受け取り、言われた言葉に少年は俯く。

「俺ももういいやって思っても、またボールを手にシュートを打ってる自分がいてさ。結局、ホントに嫌いになんてなれなくてさ」

少年に近づき背中に手を当ててトントンと軽くたたく。

「その友達もきっと君と同じで練習したくてウズウズしてるかもしれないよ」
「そう、かな……」

また、一緒に練習できるかなと、ボールを見つめて呟かれた言葉に森山も笑みを零す。

「ありがとうございます。部活としては出来ないかもしれないけど、バスケがなくなるわけじゃないですもんね」
「そうそう」

ボールを持って笑ったその子の顔が印象的だった。
その子とは結局それっきり会うことはなかった。


 * * *


それから、また一年経過して森山は三年になった。
そして迎えた誠凛高校との練習試合。
そこで公園で会った少年・伊月俊と再会することとなる。

「あの時はありがとうございました」
「……良かったね」

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プロフィール
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非公開
自己紹介:
のんびりまったり、同人活動している人間です。

【黒子のバスケ】
友人のススメで原作を読みアニメを見てます。誠凛の伊月センパイ&秀徳1年コンビを気に入っております。

作者及び出版社等は一切関係御座いません。自己責任で閲覧ください。
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