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Pixiv ⇒ 君の涙に約束しよう -前編-

少し泣き虫さんな伊月さんと森山さんの話。

色々煮詰まってますが、自分を追い込むためにあげてみました。 

+ + + + + + + + + +
彼を見つけたのは偶然だったのか必然だったのか。
今となっては必然だったんだろうと森山由孝は思えてならなかった。





秋にしては珍しく大雨だった日曜の午後。
森山は月バスと参考書を買いに都内の本屋へと赴いていた。
午前中で練習が終わったので、せっかくならと買いたい本もあったので練習終わりにそのまま出かけてしまおうと思ったのだった。
けれど今日は少し失敗したと思った。
小雨だと思って学校を出たのに都内に入った頃には大雨になっていて、外を歩くのも億劫になるほどだった。

「素直に、近くの本屋にすればよかったかも」

そうは思ったが、ここまで来てしまっては後の祭りなので素直に目的の本屋へと向かった。
本屋で目的のものを買い終えたが、このまま帰宅するのももったいないと考えた森山は本屋へ来る途中に見えたマジバーガーにでも寄って何か食べてから帰ろうと思い本屋を後にした。
さすがにこの大雨で人通りはなく静かだなと思いながら道を歩いていた。
ふと目の前に見えた人影に森山は首を傾げた。
この大雨に傘もささずに佇む人影に心の中で関わってはいけないと思いながら、横を通り過ぎようとした。が、近づくにつれ、人影の全貌が見えてくると、その人が着ている制服に目がいった。
そして思わず顔を確認してしまった。

――誠凜の……?

一度、練習試合をした誠凜高校バスケ部のPG。
こんなところでなにしてるんだろうと思ったが、そういえばここの近くに学校があったことを思い出す。
後輩がよく口にしていて覚えてしまった。
練習帰りなのだろうか、肩から鞄を提げている。

「なあ……、伊月、だっけ?」
「――ッ!」

思わず声を掛けている自分に驚いたが、掛けて少し後悔した。
顔を上げた伊月の瞳には雨の雫ではない別のものが溢れ出ていた。

「傘もささないで、風邪引くぞ?」

森山はあえて気にしないで傘をさしだし声を掛け続けた。
こうなったら最後まで関わろうと心に決めた。
ずぶ濡れで泣いている伊月がとても頼りなげに見えて放っておけなくなったというのが本音だ。

「か、いじょうの……?」
「森山由孝。覚えててくれたんだね」

驚いて目を見開いている伊月に笑みを向け目尻に残る涙を指で拭う。
その仕草で伊月は慌てて目元を擦ろうとしたので、森山は静かにやめさせた。

「赤くなるから、気にしないでそのままでいいよ」

森山は今日の練習で使わなかったタオルを取り出し伊月の頭に被せた。

「夏ならまだしも、だいぶ冷えてきたから風邪ひくよ。なんかあったの?」

森山の言葉に何かを思い出してしまったのか俯いてしまった。
そして落ちてきた雫に森山は心の中で失敗したと思いながら、ごめんねと呟いて被せたタオルごと頭を抱え込んだ。

「泣きたいなら思い切り泣きな。今日は雨音が強いから聞いてるのはオレだけだよ」
「……ぅっ」

傘を肩に置きながら森山は本格的に泣き出してしまった伊月の頭を撫で、肩を叩く。
なにか相当ショックなことでもあったのかなと、考えながら震える肩を抱え込んだ。
森山が抱いていた伊月のイメージは冷静沈着なチームの指令塔だ。
主将である日向とは違った意味でチームの要となる重要な人物なんだろうと、一度対戦して感じていた。
海常との練習試合中も一年コンビの活躍で忘れそうになるが、あの二人が活きるようにしていたのは彼の力があってこそだろう。
どんな逆境でも冷静にゲームメイクしなければならないPGは強い精神力が必要なんだと同じチームにいる笠松を見ていて思う。
伊月の印象もそれだったが、今の彼はまったく違って脆すぎるほど頼りなげだった。
ゲーム中は無理して自分を律しているのかと思うほどに印象が逆転していた。
これは、すぐに理由は聞きださない方がいいのだろうと思った。
無理に言わせても傷口を広げるだけになりかねない。
こういった一人で抱え込んで一人で泣いてしまうタイプの子は自分から口を開くのを待つのが一番良いと思いながら黙ったままでいた。
少しして落ち着いたのか肩の震えがなくなったので体を解放させた。

「……すいません」
「落ち着いた?」

頭が縦に振られ森山は伊月の頭にあるタオルでワシャワシャと髪を拭う。
見てわかるほど、伊月の制服は雨に濡れて冷たいままだ。
髪を拭ったぐらいでは雨に濡れて冷えた体を温めることは出来ない。

「早く着替えないとホントに風邪ひくね」

森山は伊月の肩を叩き、移動しようと促す。

「ここから誠凜って近い?」
「え、ああ。はい」

森山の問いに伊月は戸惑いながらも頷く。

「まだ開いてる?」
「午後に体育館を使う部活があるので、開いてます」

じゃあ、そこに行こうかと森山が言えば伊月は素直に従った。
着替えをさせたいけれど、この付近にそういった場所はなく思いついたのが学校だった。
練習試合以外で初めて他校に入るのは少しドキドキするなと思いながら校内に入る。
部室はもう鍵が閉まってるというので教室へと向かう。
さすがに新設校なだけあって、校内は綺麗だった。

「綺麗だな……」

思わず声にしてしまうほどで、後輩が興奮して話してくれた印象通りだと森山は歩きながら見つめていた。
ガラッと音を立てて入った教室にはやっぱり誰もおらず静かだった。
伊月は自分の席らしき場所に荷物を置く。
雫が落ちる程に濡れた制服に手を掛け脱ぎ始める。
森山は教室内にある机に適当に腰掛けた。
人の着替えを見つめるのはよくないなと思い携帯を取り出しそちらに目線を落とした。
それでも気になるもので横目で様子をうかがった。
濡れた制服の置き場に困ってキョロキョロして結局イスの背もたれに掛けたり、上半身裸になるのを一瞬躊躇ったりと少し可愛らしい一面を見せている。
しばらくして練習着らしき服装になる。
まだ乾ききってない髪の毛が少し気にはなったが、びちゃびちゃの制服を着続けているより全然マシだと思いながら森山はイスにかかったままの濡れた制服を見る。
さすがに制服は家で乾かした方がいいだろうと思うが、これをこのまま鞄に入れるのは良くないと考える。
何かいい方法はと考えるが思いつくものがビニール袋しかなく、今は持ってないなと諦めた。
けれど伊月は森山の心配を余所に、なんでそんなものを持っているのだろうという感じで鞄からよくスポーツ用品店で使用するビニール状のショッピングバッグを取り出して濡れた制服を簡単に畳んで入れていく。
森山はその手際の良さに感嘆しながら見つめていた。

「よく持ってたね」
「着替えや洗濯物を入れるのに便利なので何枚か入れてるんです」

まさか濡れた制服を入れるとは思わなかったですけどと、苦笑しながら鞄へと仕舞い込む。

「タオル、洗ってお返ししますね」

伊月は肩に掛けていた森山のタオルもきれいに畳んで鞄へと仕舞ってしまった。

「別に構わないのに」
「いえ、ご迷惑掛けてしまったので、それくらいさせてください」

そして改めて伊月は森山に声をかける。

「すいません。お待たせしました」
「終わった?」
「はい」

ホントにすいませんでしたと、謝る姿に森山は違うよと一言添える。

「そこは謝るんじゃなくて、感謝して」

その方がお互い気持ちいいでしょと、続けると伊月は一瞬瞠目するが、すぐにはにかんだ。

「ありがとうございました」
「はい、良くできました」

森山はじゃあ、出ようかと声を掛け振り返る。

「感謝ついでに、マジバに付き合ってくれる?」

伊月は笑ってわかりましたと言い、森山の誘いに快諾してくれた。
    
    
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非公開
自己紹介:
のんびりまったり、同人活動している人間です。

【黒子のバスケ】
友人のススメで原作を読みアニメを見てます。誠凛の伊月センパイ&秀徳1年コンビを気に入っております。

作者及び出版社等は一切関係御座いません。自己責任で閲覧ください。
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