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表紙:セキユ様 [ pixiv ・HP ]
森山×伊月 / A5FC / 44P / ¥300-
pixiv⇒【新刊サンプル】 君の涙に約束しよう
少し泣き虫さんな伊月さんと優しい森山さんの話。
抱え込んだ苦しい恋心に耐えられなくて泣いていた伊月をたまたま見つけた森山さん。
そこから始まる新しい恋物語。
同タイトルの小説を収録して、伊月の視点verと、その後の2人を収録しました。
このサンプルは【伊月視点ver】になります。
表紙はセキユ様に描いていただきました。
■ 森山視点 ⇒ - 前編 - - 後編 -
◆書店委託 ⇒
!完売いたしました。ありがとうございました。!
+ + + + + + + + + +
秋にしては珍しく大雨だった日曜の午後。
練習に行く前まで小雨だと思っていたが、練習が終わり学校を出る頃には大雨になっていて、外を歩くのも億劫になるほどだった。
練習を終え部室で着替えながら帰るのが大変そうだと話しながら伊月は部室を見渡す。日向と木吉の姿がなく感じた胸の痛みを無視して声を出す。
「あれ、日向と木吉は?」
「なんか、残って練習するってカントクに言ってるのは聞いたよ」
伊月の言葉に土田が答える。
「あの二人って結局仲が良いのか悪いのかわかんないよな」
「確かに」
小金井の言葉に土田が同意する。
誠凜の二枚看板でもある二人は日向が嫌いだと公言しているのとは反対に一緒にいることが多かった。
徐々に部室から人が居なくなり最後は伊月とテツヤ二号だけになった。
二号を撫でながら二人が戻ってくるまでいようか逡巡する。
苦しいだけの恋ならばやめればいいと何度自身に言い聞かせたかわからない。
思えば思うほど逆に強くなる一方で、これは完全に振られるまでは吹っ切れないのかもしれないと思って部室の扉を開けた。
後ろから二号がついてくるのを確認しながら伊月は二人が居るはずの体育館へと向かった。
普通ならばボールとバッシュの音が聞こえてくるはずなのにそれがなく伊月は不思議に思いながら体育館の中を覗いた。そして、覗いたことに後悔した。
木吉が日向を抱き締めていた。
それを見つめ伊月は気付いていて気付かない振りをしていた自身に自嘲した。
日向は伊月に弱音を吐くことはない。
それは木吉が不在だった頃もだし中学時代からなかった。
けれど、木吉に対しては違った。
二人がいわゆるそういう関係になっているのではないかという懸念はあったが、決定的な状況を見たわけではないので、気付かない振りをしていたが、今回のは決定打だった。
思わず体育館の扉に背を預けて涙を堪える。ここで泣くわけにはいかない。
この思いは誰にも知られてはいけない。
心配そうに見つめる二号に微笑もうとしたが無理だった。
こぼれ落ちる涙に伊月はその場には居られず静かに歩きだした。そしてそのまま降りしきる雨の中に出ていった。
伊月は大雨で良かったと思った。雨がこぼれ落ちる涙を隠してくれる。
全身がずぶ濡れになったが、今は構いはしなかった。
完全に伊月の入る余地のない二人の関係を見せつけられ伊月の心は限界だった。
特にあてもなく歩いて人気のない通りに出る。
歩いていた足を止めて立ち尽くす。
止まることない涙に伊月は雨が降り続いてくれることを願っていた。
「なあ……、伊月、だっけ?」
「――ッ!」
掛けられた声に驚いて顔を上げるとそこには見たことのある制服と顔だった。
「傘もささないで、風邪引くぞ?」
伊月の状況にあえて何も聞かず声を掛けてくる。
どこかで、見た制服だったか思い出すまで時間が掛かったがようやく思いだした。
誠凜に遊びに来た黄瀬と同じ制服だと気付いた。
「か、いじょうの……?」
「森山由孝。覚えててくれたんだね」
伊月に優しく笑みを向けて目尻に残る涙を指で拭ってくれたので、伊月は慌てて目元を擦ろうとすると森山に静かに止められた。
「赤くなるから、気にしないでそのままでいいよ」
森山は鞄を開けて真新しいタオルを取り出し伊月の頭に被せてくれた。
「夏ならまだしも、だいぶ冷えてきたから風邪ひくよ。なんかあったの?」
森山の言葉に数分前の出来事を思い出してしまい、再び涙が溢れだした。
慌てて俯くが遅かった。
森山は悪くないのに、ごめんねと呟いて被せたタオルごと伊月の頭を抱え込んだ。
「泣きたいなら思い切り泣きな。今日は雨音が強いから聞いてるのはオレだけだよ」
「……ぅっ」
優しい森山の言葉に我慢していたものがすべて外れてしまい、堰を切ったように泣き出してしまった。
そんな伊月の頭を優しく撫で、肩を叩いてくれる。
その仕草に更に涙が溢れてしまった。何も聞かずただ泣いている伊月の震える肩を抱え込む。
どれぐらいそうしてもらっただろうか、ようやく収まった涙に伊月はどうしたらいいだろうと思っていると森山は静かに伊月の体を解放させた。
「……すいません」
「落ち着いた?」
無言で頷いた伊月に森山は微笑んで頭にあるタオルでワシャワシャと髪を拭ってくれる。
「早く着替えないとホントに風邪ひくね」
森山は伊月の肩を叩き、移動しようと促しながら森山が言葉を続ける。
「ここから誠凜って近い?」
「え、ああ。はい」
森山の問いに伊月は戸惑いながらも頷く。
「まだ開いてる?」
「午後に体育館を使う部活があるので、開いてます」
じゃあ、そこに行こうかと森山が言ってくれるので伊月は素直に従った。
さすがに濡れたままでは帰りづらい。
森山と一緒に学校へと一旦戻る。
「綺麗だな……」
新設校なのでまだ真新しい校舎に森山は思わず声にしていた。
何となく部室に行くのを躊躇った伊月は自身の教室へと向かった。
誰もいない教室の扉をガラッと音を立てて入る。
伊月は自分の席に荷物を置き雫が落ちる程に濡れた制服に手を掛け脱ぎ始める。
横目で森山を見ると教室内にある机に適当に腰掛け携帯を取り出しそちらに目線を落としていた。伊月は森山を気にしながらも着替えを済ませる。
今日ほどいつも入れているスポーツ用品店で使用するビニール状のショッピングバッグを良かったと思ったことはなかった。濡れた制服をそこに入れる。
「よく持ってたね」
森山もそんなものを持っていた伊月に驚いている。
「着替えや洗濯物を入れるのに便利なので何枚か入れてるんです」
まさか濡れた制服を入れるとは思わなかったですけどと、続け苦笑しながら制服を鞄へと仕舞い込む。そして森山が貸してくれたタオルを手に取る。
「タオル、洗ってお返ししますね」
そう言って伊月は森山のタオルも畳んで鞄へと仕舞ってしまった。
「別に構わないのに」
「いえ、ご迷惑掛けてしまったので、それくらいさせてください」
洗濯するだけで今日の恩が返せるわけではないがと思いながら、伊月は改めて森山に声をかける。
「すいません。お待たせしました」
「終わった?」
「はい」
そして、頭を下げてホントにすいませんでしたと、謝罪する、そんな伊月に森山は違うよと一言添える。
「そこは謝るんじゃなくて、感謝して」
その方がお互い気持ちいいでしょとと、続ける森山に伊月は一瞬驚いたが、すぐにはにかんだ。
「ありがとうございました」
「はい、良くできました」
森山はじゃあ、出ようか伊月にと声を掛け振り返る。
「感謝ついでに、マジバに付き合ってくれる?」
森山の誘いに伊月は笑ってわかりましたと快諾した。
練習に行く前まで小雨だと思っていたが、練習が終わり学校を出る頃には大雨になっていて、外を歩くのも億劫になるほどだった。
練習を終え部室で着替えながら帰るのが大変そうだと話しながら伊月は部室を見渡す。日向と木吉の姿がなく感じた胸の痛みを無視して声を出す。
「あれ、日向と木吉は?」
「なんか、残って練習するってカントクに言ってるのは聞いたよ」
伊月の言葉に土田が答える。
「あの二人って結局仲が良いのか悪いのかわかんないよな」
「確かに」
小金井の言葉に土田が同意する。
誠凜の二枚看板でもある二人は日向が嫌いだと公言しているのとは反対に一緒にいることが多かった。
徐々に部室から人が居なくなり最後は伊月とテツヤ二号だけになった。
二号を撫でながら二人が戻ってくるまでいようか逡巡する。
苦しいだけの恋ならばやめればいいと何度自身に言い聞かせたかわからない。
思えば思うほど逆に強くなる一方で、これは完全に振られるまでは吹っ切れないのかもしれないと思って部室の扉を開けた。
後ろから二号がついてくるのを確認しながら伊月は二人が居るはずの体育館へと向かった。
普通ならばボールとバッシュの音が聞こえてくるはずなのにそれがなく伊月は不思議に思いながら体育館の中を覗いた。そして、覗いたことに後悔した。
木吉が日向を抱き締めていた。
それを見つめ伊月は気付いていて気付かない振りをしていた自身に自嘲した。
日向は伊月に弱音を吐くことはない。
それは木吉が不在だった頃もだし中学時代からなかった。
けれど、木吉に対しては違った。
二人がいわゆるそういう関係になっているのではないかという懸念はあったが、決定的な状況を見たわけではないので、気付かない振りをしていたが、今回のは決定打だった。
思わず体育館の扉に背を預けて涙を堪える。ここで泣くわけにはいかない。
この思いは誰にも知られてはいけない。
心配そうに見つめる二号に微笑もうとしたが無理だった。
こぼれ落ちる涙に伊月はその場には居られず静かに歩きだした。そしてそのまま降りしきる雨の中に出ていった。
伊月は大雨で良かったと思った。雨がこぼれ落ちる涙を隠してくれる。
全身がずぶ濡れになったが、今は構いはしなかった。
完全に伊月の入る余地のない二人の関係を見せつけられ伊月の心は限界だった。
特にあてもなく歩いて人気のない通りに出る。
歩いていた足を止めて立ち尽くす。
止まることない涙に伊月は雨が降り続いてくれることを願っていた。
「なあ……、伊月、だっけ?」
「――ッ!」
掛けられた声に驚いて顔を上げるとそこには見たことのある制服と顔だった。
「傘もささないで、風邪引くぞ?」
伊月の状況にあえて何も聞かず声を掛けてくる。
どこかで、見た制服だったか思い出すまで時間が掛かったがようやく思いだした。
誠凜に遊びに来た黄瀬と同じ制服だと気付いた。
「か、いじょうの……?」
「森山由孝。覚えててくれたんだね」
伊月に優しく笑みを向けて目尻に残る涙を指で拭ってくれたので、伊月は慌てて目元を擦ろうとすると森山に静かに止められた。
「赤くなるから、気にしないでそのままでいいよ」
森山は鞄を開けて真新しいタオルを取り出し伊月の頭に被せてくれた。
「夏ならまだしも、だいぶ冷えてきたから風邪ひくよ。なんかあったの?」
森山の言葉に数分前の出来事を思い出してしまい、再び涙が溢れだした。
慌てて俯くが遅かった。
森山は悪くないのに、ごめんねと呟いて被せたタオルごと伊月の頭を抱え込んだ。
「泣きたいなら思い切り泣きな。今日は雨音が強いから聞いてるのはオレだけだよ」
「……ぅっ」
優しい森山の言葉に我慢していたものがすべて外れてしまい、堰を切ったように泣き出してしまった。
そんな伊月の頭を優しく撫で、肩を叩いてくれる。
その仕草に更に涙が溢れてしまった。何も聞かずただ泣いている伊月の震える肩を抱え込む。
どれぐらいそうしてもらっただろうか、ようやく収まった涙に伊月はどうしたらいいだろうと思っていると森山は静かに伊月の体を解放させた。
「……すいません」
「落ち着いた?」
無言で頷いた伊月に森山は微笑んで頭にあるタオルでワシャワシャと髪を拭ってくれる。
「早く着替えないとホントに風邪ひくね」
森山は伊月の肩を叩き、移動しようと促しながら森山が言葉を続ける。
「ここから誠凜って近い?」
「え、ああ。はい」
森山の問いに伊月は戸惑いながらも頷く。
「まだ開いてる?」
「午後に体育館を使う部活があるので、開いてます」
じゃあ、そこに行こうかと森山が言ってくれるので伊月は素直に従った。
さすがに濡れたままでは帰りづらい。
森山と一緒に学校へと一旦戻る。
「綺麗だな……」
新設校なのでまだ真新しい校舎に森山は思わず声にしていた。
何となく部室に行くのを躊躇った伊月は自身の教室へと向かった。
誰もいない教室の扉をガラッと音を立てて入る。
伊月は自分の席に荷物を置き雫が落ちる程に濡れた制服に手を掛け脱ぎ始める。
横目で森山を見ると教室内にある机に適当に腰掛け携帯を取り出しそちらに目線を落としていた。伊月は森山を気にしながらも着替えを済ませる。
今日ほどいつも入れているスポーツ用品店で使用するビニール状のショッピングバッグを良かったと思ったことはなかった。濡れた制服をそこに入れる。
「よく持ってたね」
森山もそんなものを持っていた伊月に驚いている。
「着替えや洗濯物を入れるのに便利なので何枚か入れてるんです」
まさか濡れた制服を入れるとは思わなかったですけどと、続け苦笑しながら制服を鞄へと仕舞い込む。そして森山が貸してくれたタオルを手に取る。
「タオル、洗ってお返ししますね」
そう言って伊月は森山のタオルも畳んで鞄へと仕舞ってしまった。
「別に構わないのに」
「いえ、ご迷惑掛けてしまったので、それくらいさせてください」
洗濯するだけで今日の恩が返せるわけではないがと思いながら、伊月は改めて森山に声をかける。
「すいません。お待たせしました」
「終わった?」
「はい」
そして、頭を下げてホントにすいませんでしたと、謝罪する、そんな伊月に森山は違うよと一言添える。
「そこは謝るんじゃなくて、感謝して」
その方がお互い気持ちいいでしょとと、続ける森山に伊月は一瞬驚いたが、すぐにはにかんだ。
「ありがとうございました」
「はい、良くできました」
森山はじゃあ、出ようか伊月にと声を掛け振り返る。
「感謝ついでに、マジバに付き合ってくれる?」
森山の誘いに伊月は笑ってわかりましたと快諾した。
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自己紹介:
のんびりまったり、同人活動している人間です。
【黒子のバスケ】
友人のススメで原作を読みアニメを見てます。誠凛の伊月センパイ&秀徳1年コンビを気に入っております。
作者及び出版社等は一切関係御座いません。自己責任で閲覧ください。
※無断転載禁止※
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