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表紙:べっこうリコ様 HPpixiv
宮地×伊月 / A5FC / 36P / ¥400- 

pixiv ⇒ 【DCR1新刊サンプル】 好きっていいなよ。宮月の場合

伊月につきまとうストーカーを欺くために、偶然助けてくれた宮地と恋人として振る舞うことになった。形だけの関係のはずなのに、どんどん宮地に惹かれていく伊月はその関係に悩んでいく――……

◆書店委託 ⇒ とらのあな様 / CQ-WEB様




+ + + + + + + + + +


遂に来るところにまで来てしまった。
心の中にある危機感に焦りながら一定距離を持って後をついてくる足音は伊月の耳にはっきりと聞こえていた。
このまま家に向かうのはどう考えても危ないと感じた伊月は、今までの経験から走って振り切ろうと考えて走り出した。
伊月が走り出したことに気づいたその人物は伊月を見失うまいと走り出していた。
しばらく走っていれば疲れて諦めるかと思っていたが、いっこうに後ろの足音が消えることはなく伊月は焦りと恐怖で必死に逃げようと走り続けた。
けれど、伊月のそんな願いとは裏腹に足音は消えるどころか逆に近づいているような気さえして、伊月は必死に走った。
一体、自分がどこをどう通っているのかすら、わからなくなるくらい走り続け、背後を確認すれば追ってくる人影が見えあわてて路地を曲がった。
前を見ていなかった伊月の体に誰かとぶつかった衝撃があり、足を止める。

「す、すいませっ……」

息を切らし、ぶつかってしまったらしき人物を見ることなく謝る。

「伊月?」

名前を呼ばれ顔を上げるとそこには秀徳高校三年の宮地清志がそこに立っていた。
思ってもいなかった知り合いの登場に伊月は呆然としたまま宮地を見つめていた。

「どうしたんだよ、そんなに息切らして」
「あ……」
「それに、顔、真っ青だぞ?」

呼吸を整えながら、なにも言うことの出来ない伊月の顔色に驚きながら問いかけるそれは、試合や夏の合宿で見かけた鋭いものではなく柔らかい。
頭が真っ白になっている伊月の耳に近づいてくる足音が聞こえ、ハッと我に返り体をすくめて背後を振り返る。
逃げなければと体が走り出そうと動かしたところで宮地が伊月の腕をつかみ引き寄せた。

「…………!」
「黙ってろ」

耳元で聞こえた宮地の小さな声に震え、思わず宮地の制服を震える手で掴む。
徐々に近づいてくる足音が背後で止まる。
音しか聞こえず、伊月はどうなっているのか確認しようと頭を動かそうとすると宮地が頭を抱えるように抱き込んでしまい身動きが出来なくなった。
けれど更にゆっくり足音が近づいてくるのが聞こえ伊月は体を強ばらせた。

「その子……」

背後から聞こえた男の声に伊月は体を震わせる。
伊月を追いかけていた人物は宮地と対峙しているようだった。

「コイツに何の用だよ」

先ほど伊月に掛けた声とは違い怒気が含まれている。

「君は?」
「俺は、コイツの恋人だよ。だから何の用だって聞いてんだよ」

伊月を抱きしめる腕を緩めることなく、宮地は相手に怯むことなく言葉を続ける。

「コイツの周りちょろちょろすんなよ。目障りなんだよ、いい加減にしねえと警察呼ぶぜ?」

宮地はそう言って器用に携帯を取り出しボタンを押す。

「……」
「消えな」

相手の息を飲む音が聞こえたかと思うと、後ずさりするような音が聞こえ、走る足音が遠ざかっていく。
完全に音が聞こえなくなるまで宮地は伊月を抱きしめてくれていた。

「行ったか……」

確認するように宮地が呟いて伊月の体を解放する。

「平気か?」

顔を上げることが出来ないでいる伊月の肩をぽんぽんと叩く。

「ずっと走って逃げてきたのかよ」

状況を見てそう気づいた宮地は力無く立ち尽くしている伊月の目を見つめる。
その視線に気づき伊月は宮地にお礼を言おうと口を開いたが、声は出ることがなかった。
代わりに涙が頬を伝う。
止めることが出来ずこぼれ落ちる涙を拭おうと手をあげると宮地の手がそれを掴んでしまう。
どうして止められてしまったのかと顔をあげると同時に宮地が目元にキスをしてきた。
伊月は驚きに目を見開き宮地を呆然と見つめる。
宮地のキスで拭われた涙は驚きで止まったのを確認すると、宮地はそのまま伊月の口にキスをした。
その一連の流れに伊月は何も出来ないまま宮地のされるがままになる。
思考が徐々に戻ってきてようやく宮地にキスされている状況がわかってくるが、その頃には呼吸がうまく出来なくて苦しくなり、伊月は目を瞑り息がしたいと宮地に訴える。
いつの間にか完全に涙は止まっていて、宮地に唇をい解放されたときには息苦しさの方が勝っていて、呼吸を整えるのに必死な伊月の頭を撫でる手に伊月は見上げて宮地を確認する。

「悪かったな。一応、恋人らしいところしておけば、向こうも諦めるかと思ってな」
「あ……」

まだ、近くにいたのかと体をすくめ、背後を確認する伊月に宮地がもういないと肩をたたく。

「これで諦めてくれればいいけど」
「……」
「にしても、誠凜からずっと走ってきたのか?」

他の奴らはどうした? と、問いかけられ伊月は黙り込む。

「つけられてると気づいたときには、一人だったので」
「……はあ。まったく、危ないだろう。もう少し危機感を持たねえと、お前、自分が思ってるより顔が整ってるんだから」

宮地はそう言って目元を指で撫でる。

「俺と会ったから良かったものの。気をつけろよ」
「ホントにご迷惑お掛けして、すいませんでした」
「そうじゃねえだろ」
「え?」

頭を下げて謝る伊月に宮地は違うだろうと顔を上げさせる。

「こういうときは感謝の方」
「……、あ、ありがとうございました」
「よし」

伊月の頭を撫でてそう言った宮地に伊月の心もどこか軽くなった。

「んじゃ、帰るか。家はどこだ?」
「えっ?」
「え、じゃねえよ。こっから一人で帰る気か? いいから送らせろよ」

一人でという単語に体が強ばったのを宮地は見逃さず、気にするなと伊月の頭を撫でてから歩き出す。
改めて伊月よりも遙かに高い身長に肩を並べて気づかされる。
力強く抱き寄せられ伊月を抱き込めるほどの包容力。
とっさの判断が出来る冷静さ、観察力、とても伊月がかないそうな部分は見当たらない。
これが年上、先輩というものなのだろうかと思わずにはいられなかった。

「そうだ。連絡先教えろ」
「あ、はい」

宮地に言われるまま伊月は自身の連絡先を宮地に教えた。
宮地も伊月に連絡先を通知してくれる。

「なんかあれば連絡しろよ。ここまで事情を知ってんだから、頼りやすいだろう。遠慮はすんなよ、したらひくかんな」

最後の言葉がとても物騒だったが、伊月は素直に頷いた。
正直、日向たちには言いづらい。
ならば、宮地の言うとおり事情を知ってくれている宮地の方が頼りやすい。
けれど、やはり一つ引っかかり、問いかける。

「だけど、やっぱりご迷惑じゃ?」
「ばーか。迷惑だったら、わざわざ連絡先なんてきかねーよ」

言いながら伊月の頭を撫でてぽんぽんと叩く。そして言いづらそうにそれにと続ける。

「一応、恋人ってことになってんだから、連絡を取り合うのは普通だろ?」

だから気にすんなと伊月に言い宮地は隣を歩く。
伊月はその言葉に少し心がくすぐったくなり、思わず微笑む。
誰かがいてくれるだけで、こんなにも心強い。
あの状況で宮地とぶつかって良かったと思えた。

「あの、何かお礼をさせてください」
「お礼?」

伊月の言葉に宮地は一瞬眉を寄せたが、少し考えた後、口を開いた。

「映画につきあってくれないか?」
「映画、ですか?」

思ってもいなかった言葉に伊月は首を傾げる。

「見たい映画があんだけど、木村も大坪もホラーモノは行けないって」
「お二人ホラー、ダメなんですか?」

少し意外な姿に驚きながら、なんの映画なのか不思議に思った。

「まあ、オレもそんなに好きじゃねえんだけど、推しメンが出てっから見ておきてえなぁって」
「推しメン……?」

少しずつ出てくるヒントを頼りに伊月は推察する。

「もしかして、みゆみゆの出てる映画ですか?」
「知ってるのか?」
「最近、テレビでゲスト出演して宣伝してますよね。あれってホラーだったんですね」

主演ではないが、重要な役どころで出ていると宣伝していたのが印象的だった。

「オレでよければつきあいますよ」

ホラーも苦手ではないので、大丈夫ですと付け加えるとさっそく予定を合わせようと宮地との会話が盛り上がった。
この時から、伊月と宮地は恋人(仮)状態で連絡を取り合うようになった。


......to be
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プロフィール
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KK
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
のんびりまったり、同人活動している人間です。

【黒子のバスケ】
友人のススメで原作を読みアニメを見てます。誠凛の伊月センパイ&秀徳1年コンビを気に入っております。

作者及び出版社等は一切関係御座いません。自己責任で閲覧ください。
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