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表紙:ほしいも様 pixiv
森山×伊月 / A5FC / 36P / ¥400-
pixiv ⇒ 【SCC23新刊】Colors of the Heart
大学生になった森山と伊月の同棲話から、さかのぼる2人の馴れ初め話になります。
◆書店委託 ⇒ とらのあな様 / CQ-WEB様
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森山由孝の朝は決まっている。
「由孝さーん、起きてください」
毎朝聞こえる愛しい人の声。朝食の美味しそうな匂いとともに起こしてくれる。
ゆさゆさと体を軽く揺らされ起こされる。耳に心地よい声は森山をゆっくりと覚醒させる。
「んんっ……」
「おはようございます、由孝さん」
「……おはよう」
ゆっくり上げた瞼をのぞき込むように笑顔の恋人である伊月俊が声を掛けてくれている。
今日も可愛いなぁとぼんやり思いながら声を出す。
「今日も良い天気ですよ」
そんな森山にもう一度笑みを向けて伊月はカーテンを開けた先に見える空を見つめて森山に声を掛ける。
「今日はゆっくりで大丈夫ですけど、ちゃんと起きてくださいね」
二度寝しないように釘をさして伊月は部屋を出ていった。
森山は起き上がりその背中を見つめながら背伸びをした。
基本的に朝は弱く起こされなければ昼近くまで寝てしまう森山に伊月は一日がもったいないと声を掛けるようになった。
森山もそれを嫌がることなく受け入れている。
伊月は本当に森山が疲れているときには決して無理に起こすことはせずに寝かせてくれる。
時々目が覚めてお昼回ってたときに焦って飛び起き、リビングに現れた森山に伊月は『ゆっくり眠れましたか?』と、笑顔を向けてくれたので、起こすことはせずにいてくれたんだと察した。
そんな気遣いの出来る伊月に森山は文句などはなかった。
伊月の大学入学を期に二人は一緒に暮らすことにして、現在の住まいに決めた。
互いの大学にも通いやすいこの場所は、周辺施設にも不便はなく至って快適だった。
ある程度料理の出来る伊月が食事を担当し、他の家事を森山が担当している。
着替えを済ませてリビングに来た森山の前には和の朝食が並べられていた。
「おはようございます」
お味噌汁の入ったお椀を持って森山に声をかける伊月に森山もおはようと返す。
伊月の家が基本的に毎朝和朝食だったので、伊月の作る朝食も基本的に和朝食だった。ご飯と味噌汁におかず。
今日は鮭の塩焼きという理想の朝食だ。
森山の家庭は朝にパンということも多かったから、やはり習慣のちがいというものはあるんだなと並べられた朝食を見て感じていたのも、今では少し懐かしい記憶だ。
今となっては、これが当たり前の朝の光景だ。
「はい。出来ました。食べましょう」
「うん、いただきます」
「いただきます」
二人揃っての朝食も慣れた光景だ。
初めて向かい合って食べた朝食は少し恥ずかしさもあって顔を上げてぶつかった視線に頬を赤らめていたのも前の話だ。
「ん、なんかお味噌汁味変わった?」
「あ。わかります?」
今日はお出汁を少し変えたんですよと、うれしそうに話す伊月に森山は耳を傾ける。
「母から分けてもらったんですけど、アゴっていう魚の出汁なんです」
「美味しいね」
「良かったぁ。お口に合って」
母からもいつもと違って深みが出るはずだからと言われたんですけど、良かったですと、続ける伊月に森山は笑みを向ける。なんでもひたむきに努力を惜しまない伊月は料理も一生懸命だ。
少しでも美味しいものをといつも頑張ってくれている。少し必死になりすぎてしまうときは、森山もブレーキを掛けさせて止めることもあるが、楽しそうにやっているものに関してはあえて止めていない。
「今日は買い物?」
確か、食材もなくなってきてたよね? と、声を掛けるとそうなんですと、伊月がうなずいた。
大学の講義もバイトもない日は基本的に生活の物を買いに行く買い出し日になることが多い。
一緒に買い物をして夕食に食べたい物を森山がリクエストするのがいつもの光景だ。
「だから、食べたいもの決めておいてくださいね」
「わかった」
嬉しそうに笑って言う伊月に森山も笑みを返した。
こうやって伊月が自然に笑えるようになって森山は安堵していた。
それこそ、付き合いだした頃は少し悲しそうに笑うはかない笑顔だったのだから、本当に良かったと思う。
森山が大学一年の冬、伊月は失恋の痛手と失意のどん底にいた。
それを周りにいたチームメイトは誰一人として気付くことなく伊月は一人で抱え込んでしまっていた。
そこに手を差し伸べて救いあげたのが森山だった。
~ 中 略 ~
大学の講義に耳を傾けながら見つめるのは就職案内。
来年からは本格的にやらなければ、無職で社会に出ることになってしまうと思いながらも自分に何が向いているのかがわからず、どういった職種がいいのかもわからない。
早めに見ておく分には、損することはないだろうと思い資料を見たが逆に悩みを深めた様にも思う。
ひとまず今は講義に集中しようと思い資料は閉じることにした。
講義を終えて携帯を見つめる。今日はこのままバイトもなく帰るだけだ。
携帯には一通のメールが来ていた。
操作して確認すればそこには、今日はもうすでに講義を終えて家に帰っている伊月からのものだった。
『家に卵がなかったので、買ってきてくれますか?』
メールの最後の一文は買い忘れた食材だった。森山は笑みを浮かべて返信を打つ。
『わかった。買って帰るね。今日のご飯は何?』
毎日、違うメニューを提供してくれる伊月のご飯は楽しみの一つだ。
「森山、何ニヤニヤしてんだよ」
「別になんでもないよ」
一緒に講義を受けていた友人が横で笑みを浮かべている森山に向けて不敵な笑みを浮かべている。
「どうせ、同居してるとか言う恋人からのメールだろ」
「よくわかったな」
「わかるよ。そんなデレデレした顔しやがって」
ノロケ話は他でやれよと、釘を刺され伊月との甘い話はさせて貰えず森山は残念だなと思った。
森山の友人たちには恋人と同居して幸せな日々を過ごしていることを隠してはいない。
さすがに恋人が男だとは行っていないが、合コンなどの誘いは恋人がいる以上受けられないと言っていた。
高校から森山を知る友人には女好きで残念でしかなかった森山に恋人ができたと大騒ぎになったのも、前の話だ。
確かに森山自身もあんなに女の子と言っていたのにと不思議に思った。
伊月は顔も整っているし綺麗だけれど立派な男性だ。それは森山もよくわかっている。
けれど、不思議と引きつけられた。
そんな不思議な魅力が伊月にはあった。
森山にもその何かがわかっているわけではなく、たびたび伊月を不安にさせている原因だ。
伊月はあまり自分自身に自信がなく過小評価をする。
それは間違いだと諭してはいるが、あまり効果はない。
その証拠になんでも頑張りすぎる。
それは高校の頃から変わらず伊月の良さであり、悪いところでもあった。
好きな人から好かれなかった原因は自分の魅力の無さや自分の性格がきっと好かれないんだと思いこんでいる。
そんなことはないのだと、言っても受け入れてはくれない。
『森山さんは優しい』
そう言って聞き流されてしまっていた。
どうしたら伊月自身の魅力に気付いてくれるのかと、悩んだが素直にその良さを言葉で伝えることしか思い浮かばなかった。それこそ、毎日根気よく。
そうして得られた信頼は大きい。
だから、森山が伊月に抱く好きという感情は信じてもらえ、受け入れてもらうことができた。
そうでなかったら、今頃この感情も森山の優しさだと受け流されてしまっていたかもしれない。
森山は優しい。
優しいから伊月のそばにいてくれる。
そういった図式は伊月の中で大きな物だった。優しいだけで人は一緒に住まない。
伊月に対し、少なからず好意があるから出来る行為だとダジャレの様に言えば、少し悲しげに笑って確かに嫌いじゃ出来ないと言った。
そんな出来事も今では良い思い出だ。
そんなことを思い返していると携帯に何かを受信した知らせが届いた。
出して確認してみれば、伊月からの返信だった。
『今日の夕飯はカニ玉です』
メインの食材を買い忘れた恥ずかしさの滲ます絵文字も入ってなんとも可愛らしいメールに森山は思わず吹き出した。
「どうした?」
「いや、カニ玉やるのに卵買い忘れたって」
肩を震わせて笑いをこらえている森山に友人は呆れ顔で森山の頭にチョップをくらわした。
「だから、ノロケはよそでやれって」
「いたた。ごめん、ごめん」
しっかりしているようで、時々抜けた行動をする恋人に森山は毎日が楽しくて仕方がなかった。
...to be
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のんびりまったり、同人活動している人間です。
【黒子のバスケ】
友人のススメで原作を読みアニメを見てます。誠凛の伊月センパイ&秀徳1年コンビを気に入っております。
作者及び出版社等は一切関係御座いません。自己責任で閲覧ください。
※無断転載禁止※
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