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表紙:たまご様 pixivHP
宮地×伊月 / A5FC / 28P / ¥300- 

pixiv ⇒ 【CC東京133新刊サンプル】 雪の降る日に

受験生の宮地と伊月のセンター試験までの日常です。

◆書店委託 ⇒ とらのあな様 / CQ-WEB様



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年も明け、三学期が始まった一月の朝。伊月は目が覚めても、なかなか布団から出ることが出来ないでいた。
しかしそれでは駄目だと、伊月は気合いを入れて起き上がる。
家の中だというのに、体の芯から凍える寒さの中、伊月は朝のジョギングに行くために、着替え始めた。
着替えを終えて、カーテンを開けると、外はまだ薄暗く、空に星が瞬いている。

「よし」

軽く声を出すと、伊月は部屋を後にした。
玄関まで行くと、朝食の準備のために起きてきた母親と遭遇する。

「おはよう」
「おはよう。行ってくる」
「気をつけてね」

こうやって母親と挨拶するのは毎朝の習慣で、伊月は外へ、母親は台所へと向かった。

「寒っ」

外に出ると、体が身震いする。一段と厳しい寒さに、身がすくんだ。
吐き出す息は白く、吹き付ける風が頬を冷たくする。
飼い犬の元へ行き声を掛けると、伊月が出てくるのを待っていたかのように、小屋から飛び出してきて、尻尾をちぎれんばかりに振り、伊月を出迎えてくれる。
少し待ってて、と愛犬に言うと、伊月はその場で軽く準備運動をしてから、愛犬のリードを手に持つ。
学校で飼っているテツヤ2号よりも大きい愛犬の散歩も兼ねて、伊月は家の敷地から駆けだした。

「一月に入って、益々冷え込んできたな」

走り出すと、冷たい空気も心地よくなってくるほど体が温まってくる。けれど、吹きつける風はそんな温まった体から熱を奪おうとするかのようにとても冷たい。
伊月の横で一緒に走っている愛犬の息も白く、見ているだけで寒々しい。

「雪、降るかな」

ウインターカップも終わり、上級生がいない伊月が所属する誠凜バスケ部は、主将の引継をすることなく、来年のインターハイに向けて、再始動した。
しかし一方で上級生がいる他校は、三年生が引退し、新体制となり、きっと慌ただしいのだろう。
引退した三年生は、本格的に受験生となり、自身の進路に向けて走り出さなければいけない。
伊月にとって大事な人も、もうすぐ進路を決めるための、大事なセンター試験の日が迫っていた。
今のところ、週間予報では雪の予報は出ていないが、毎年受験生を襲う降雪が今年は来ないようにと、明るみ始めた空を見上げ、伊月は走りながら祈った。

 * * *

机の上に広がる大学入試の過去問題集を前にしながら宮地は何度目かの溜息を吐いていた。
ウインターカップが終わったと同時に、宮地たち三年生は正式にバスケ部を引退し、晴れて受験生という肩書きだけが残った。
新学期が始まると、より一層強くその事実を感じ、学年全体が進学に向けてラストスパートと言わんばかりに、各試験に向けた対策の時間に、授業内容が変わっていった。
そんな中でも、既に推薦などで進学先が決まっている人たちもいるので、これからと力を入れている面子との熱量の差はどうしてもあった。
自分も受験という柵から抜け出したら、きっと同じようになるのだろう。
けれど、まだ自分は気を緩めていいわけではない。
数日後に迫るセンター試験に向けて、更に気合を入れて、受験勉強に取り組まなくてはいけなかった。

「………………」

ふと、青い学業成就のお守りが視界に入った。
勉強をする時に、必ず机の上に置くようにしているそれは、今年の初詣の時に、恋人である伊月が、宮地にくれたものだ。

『お守りって、人に買って貰った方がご利益があるんですよ』

そう言って、社務所で買ったお守りを宮地へ渡す前に、額に当てて合格できますようにと念じてくれた。

『宮地さんには、必要ないかもしれないけど。頑張ってくださいね』

笑顔と共に渡されたお守りは、今の宮地の頑張りの源だった。
集中力が切れそうになってもそのお守りを見ればやる気が出た。
受験生の宮地に対して力になれる事がないと言っていたが、宮地に一番力をくれていた。
ページの捲る音と、シャープペンシルを走らせる音しかしない静かな教室で、そのお守りを見つめ、気持ちを引き締めると、再び過去問に取り組んだ。
学校という場はそれだけで集中力が増すので、放課後もそのまま学校に残り勉強を続けるのが、宮地の習慣になった。
場所は日によりまちまちで、今日は、教室で委員会があるらしく、図書室でやろうと、鞄を持って移動する。
ほんの数週間前まで、体育館で汗水たらして練習していたのが、嘘のように、宮地は問題集を開くと、勉強へと没頭した。

「宮地も勉強か?」
「大坪」

声を掛けられ顔を上げると、同じく受験生となった大坪が宮地の横に立っていた。

「お前も?」
「ああ、さすがにもう数日しか残されてないしな」

センター試験まで残り少ない日数の中、先日までバスケ部の主将として駆け抜けてきたのだから、他の生徒よりも受験勉強という点では出遅れている。
焦らない方がおかしいだろうと大坪言い、宮地の隣の席に腰掛け、机の上に過去問を取り出す。
そして宮地の勉強道具の中にお守りがあることに気付くと、大坪は問いかける。

「宮地でも神頼みするんだな」
「願掛けみたいなもんだ」

置いてあるお守りに触れて宮地は大坪に言葉を返す。
大坪は確かにやらないより、やった方がいいなと言うと、問題集を広げた。

「邪魔して悪かったな」
「いや、構わねえよ」

お互い、やるべきことはやらないといけないと言い合い、それぞれの勉強に戻った。
集中すると時間がたつのがあっという間で、図書委員に下校時間ですと声を掛けられるまで二人は続けた。
あたりを見れば最後まで残っていたのはそうやって勉強していた三年生ばかりで、みんな慌てて片付けていた。宮地と大坪も片付け、鞄を手に取ると、図書室を後にした。

「こんなにも体を動かしてないのは、不思議な感じだな」
「確かに。終わったら思いっきりバスケやりてぇ」
「様子見に行くついでに混じるか?」
「それいいな」

体育館から漏れる光を見つめ、必死にボールを追いかけ練習していた日々を懐かしむ。
たった数日前まで繰り広げていた試合が遠い日に感じてしまう程、今は勉強漬けだった。

「にしても、寒いな」
「そうだな」

校舎の外に出ると感じる冬の寒さに思わず肩を竦める。
首に巻いたマフラーに顔を埋めて息を吐く。吐きだした息が白く消える。

「当日、雪が降らねえといいんだけど」
「今のところ、予報は出てなかったよな」

大坪の言葉に、宮地はそうなんだけどと続ける。

「出てなくても降ったりするからなぁ」
「この寒さだとわからないな」

大坪も寒さを噛み締めるように呟き歩き出す。

「なんにしても、当日まで風邪をひかないようにするところからだな」
「天気がどうであれ、体調は万全じゃないとな」

お互いに気を付けようと話して、校門前で別れる。
大坪と別れた後、宮地は息を吐きだしながら、鞄に入れっぱなしだった携帯を取り出し確認する。
一件のメールの受信を知らせる通知に、宮地の顔に笑みが浮かぶ。
『お疲れ様です』というタイトルの後に続く文面を読む。
部活の終了と共に送られてくる恋人からのメールを読むのが、宮地の毎日の日課だった。
伊月たちの代からの新設校である誠凛は三年がおらず、引退して新しい体制となるわけでもなく、変わらない体制で練習を続けていると書いてある。
そしてメールには、一日の出来事と、宮地への気遣いの言葉が綴られていた。
学校が違い、宮地が受験生という立場でもあるせいで、頻繁に会うことが叶わない。
実際、初詣で会って以降、一度も会っていなかった。
宮地と伊月が恋人となったのは秋で、その頃はお互いウインターカップに向けて練習漬けで、会えたのは二回きりだった。
合計で三回。恋人同士にしては、あまりに少ないだろう。
受験生だからといって四六時中勉強しているわけではないし、会うからと言って、二十四時間一緒に過ごすわけではない。
けれど、伊月の性格上、宮地が受験生という立場を抜けない限り、会いたいとは言わないだろうと、宮地は思っていた。
とはいえ、自分から誘うというのもどうなのだろうと思っている。
先日の初詣も宮地から切り出したし、その前の二回も、宮地から誘っていた。
思い返してみると、伊月から『会いませんか?』という誘いを受けたことがないことに、宮地は気づいた。
それからというもの、伊月から言い出すまで、自分から誘わずにいようと、宮地は思うようになってしまった。
けれど、こうして恋人からのメールを毎日読む度に募る、会いたいという衝動を、自分はいつまで抑えていられるだろうと、宮地は返信のボタンを押した。

......to be
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プロフィール
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KK
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非公開
自己紹介:
のんびりまったり、同人活動している人間です。

【黒子のバスケ】
友人のススメで原作を読みアニメを見てます。誠凛の伊月センパイ&秀徳1年コンビを気に入っております。

作者及び出版社等は一切関係御座いません。自己責任で閲覧ください。
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